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Pick up Interview 松本幸四郎・中村橋之助

日本舞踊協会が新たに展開したシリーズ“未来座”。
日本舞踊をもっと身近に感じてもらうべくスタートした“SAI”シリーズの第2回公演が6月22日から国立劇場小劇場で行われる。
今回の演目は世界的オペラ『カルメン』を題材にした『裁SAIカルメン2018』。未来座の発起人の1人である松本幸四郎さんと、この作品が創作舞踊初挑戦となる中村橋之助さんにお話を伺った。

 伝統舞踊である日本舞踊の普及を通じて、文化の発展に寄与することを目的とする日本舞踊協会。そのメンバーであり、日本舞踊の行く末を案じながら逝去された十世坂東三津五郎さんの意志を継ぎ、松本幸四郎さんをはじめとするメンバーたちが“未来座”を立ち上げてから1年。日本舞踊への固定概念を打破するべく始まった第1回目の公演『賽 SAI』に続く第2回公演が『裁 SAI カルメン2018』が6月22日より上演される。
【幸四郎】 「キーワードになっている『SAI』には、Succession And Innovation、つまり継承と革新、伝統を繋ぎながら“今”こそ一番輝き、そして“未来”へと光を放つ公演でありたいという願いが込められております。昨年の初公演はサイコロの『賽』。振られた賽子のように色んな姿を見せる日本舞踊の多彩さを表現しつつ、どんな目がでるかという想いを込めました。そして今回SAIを象徴するワードは『裁』。実際のところ、なかなか厳しくなっている日本舞踊人口ですが、それは時代がそうだからというわけではございません。そこで色んな日本舞踊作品を作り、日本舞踊からのおもてなしをしていこうという我々の試みの上で、みなさんにどう裁いて頂けるのかという意味も含みました。『カルメン』を題材に日本舞踊を上演するのは今回で3回目ですが、過去の作品をもう一度新しく、今の時代の人たちへ料理してもらうというのも新作のあり方なのではないかということで、この演目に決定しました」
 様々な運命に裁かれながら生きる男女を描いた世界的オペラ『カルメン』。カルメンに翻弄されながらも悲劇的な運命を辿るホセ役に大抜擢されたのが四代目、中村橋之助さんだ。
【橋之助】 「創作舞踊公演に出演するのはこれが初めて。お話を頂いたときはびっくりしました。でも歌舞伎以外の日本舞踊協会の新しいものに出させて頂くというお話は率直に嬉しかったのと、自分には想像がつかない新しい世界へのチャレンジとなるので、今は楽しみな部分が大きいです。洋楽で踊るということがまず初めてなので、カウントを取るだとかまったくもって不慣れなことばかり。今はまだお稽古前なので、前回の作品を拝見させて頂いて1お客さんとして楽しんでいるだけですが、お稽古が始まったら先輩方から吸収できるところは頂いて、こっちの方がいいなと思うところは自分なりに新しく発信できたらと思っています。今回の座組の中でも僕が1番若い。ホセという人は気持ちも一途だし、若々しいフレッシュさというのが大事な部分になってくると思うのでそこは意識したいですね」
【幸四郎】 「正直、今回みなさまにとって一番知られている演者が橋之助だと思います。襲名後、新しく橋之助という名前になって初めての挑戦といいますか、未知のところへ飛び込まれるので、積極的に楽しんで欲しいですね。自分の持っているものを全部生かして、自分の得意技でこの舞台に立ってもらえればと思います」
 あらすじがある物語をセリフのない舞踊で演じる。それを表現するのが一番難しいと幸四郎さんは話す。
【幸四郎】 「しゃべってはいけないという決まりはないですが、舞踊ですので体で感情を表現していくのが一番になる。ただストーリーを追っていくにあったって、人間を演じますので見ていてなんでしゃべらないんだろうというツッコミを与えてはいけない。これが本当に難しいんです。これは永遠の課題ですね。でも言葉じゃなく、体で表現する、これさえ成立してしまえば全世界どこでも上演できるものになります。そこを目指して作っていきたいと日々奮闘しております」
【橋之助】 「正直、日本舞踊は敷居が高いと思われていますし、僕たち同世代の方にもどう楽しんでいいのかわからないと言われます。でも僕の勝手な考えとしては、理解するというより見て楽しんでくれるのが1番だし、それが1番嬉しい。今回のような新しい試みに関してもそれは一緒で、楽しみながらストーリーがスッと入ってくるように僕たちが演じなきゃいけないと思っています。堅苦しく考えず、ひとつのエンターテインメントとして見て頂けたら嬉しいですね」
 最後に日本舞踊といえば所作の美しさ。普段の生活で気をつけるだけで美しく見えるポイントを伺うと。 【幸四郎】 「日本舞踊は指の先、足の先まで神経をとよく言いますが、手のきれいさというのはハッとするところかもしれませんね」
【橋之助】 「僕も手には目がいきますね。あとはお行儀。お箸の持ち方、肘をつかないなど、初歩的なことがきちんと出来ている人は美しいんじゃないかと思います」
【幸四郎】 「それと『思っていることはあまり言わない』ですね。目でものを言う方がいいんじゃないでしょうか(笑)」


TEXT / Satoko Nemoto PHOTO / Isamu Ebisawa

Profile 松本幸四郎/1973年生まれ。1979年、三代目・松本金太郎として初舞台を踏む。1981年に七代目・市川染五郎、2018年に十代目・松本幸四郎を襲名。1987年、舞台『ハムレット』で史上最年少の主演を務め注目を集める。以降、歌舞伎俳優の他に、映画やドラマなど多岐に渡り活躍中。

Profile/中村橋之助/1995年生まれ。中村芝翫の長男であり、祖父は七代目中村芝翫。2000年9月歌舞伎座〈五世中村歌右衛門六十年祭〉の『京鹿子娘道成寺』の所化と『菊晴勢若駒』の春駒の童で初代中村国生を名のり初舞台を踏む。2016年10・11月歌舞伎座で四代目中村橋之助を襲名。

Vegas第2回日本舞踊 未来座=裁(SAI)「カルメン2018」
 演出/花柳輔太朗 振付/猿若清三郎、花柳輔瑞佳
 出演/ソル組:市川ぼたん、中村橋之助 ルナ組:水木佑歌、花柳寿楽 他
 公演/6月22日(金)~24日(日) 
 会場/国立劇場 小劇場(千代田区)




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