目標に邁進する中、誰かの思いが背中を押してくれる時もある【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で主人公の娘役のジョイと敵役のジョブの二役を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ一躍時の人となった、ステファニー・スー。
自分の目標に邁進する過程で挫折を経験しても、誰かの思いが背中を押してくれる時もあるはず。
母親の思いに応えるために地道に女優として活動してきた彼女の生き方に学びたい。
映画「フォールガイ」
ステファニー・スー
ハリウッドでスタントマンとして活躍していたコルト・シーバース(ライアン・ゴズリング)は、撮影現場でスタントに失敗して心と身体にダメージを負い業界から姿を消していた。
それから18ヶ月後、レストランの駐車係をしていたコルトの元に映画プロデューサーのゲイル(ハンナ・ワディンガム)から連絡があり、新作映画の現場に復活して欲しいと懇願される。
彼は何度も依頼を断ったのだが、その新作の監督が元恋人のジョディ(エミリー・ブラント)だと知り、スタントマンとして職場復帰を決意する。
現場に戻ったコルトは、スタントとは別の仕事としてゲイルから現地で行方不明になっていた主演俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)の捜索を依頼される。
コルトはジョディの新作映画完成のために必死にトムを捜索するが、その過程で事件に巻き込まれてしまうのだった…。
1980年代の人気ドラマ「俺たち賞金稼ぎ‼ フォール・ガイ」からインスパイアされた本作の監督デヴィッド・リーチは元々スタントマンで、『ファイト・クラブ』ではブラッド・ピットのスタントダブルも務めていた人物。
彼はキャリアを積み監督として数本の映画を撮った上で、自身の経験が最大限に活かされた本作『フォールガイ』を完成させたのです。
タイトルの『フォールガイ』を直訳すると“落ちる男”ですが、その意味は多岐に渡っていて、“身代わりになる人”や“お人好し”そしてスタント用語で“高所から主人公の代わりに落ちる男”という意味もあります。
近年ハリウッドではスタントマンに対する待遇の改善と、これまでの活動に対する敬意の無さが叫ばれていて、ライアン・ゴズリングは「スタントマンの手柄を俳優が自分の物にしてしまっている」とコメントしたり、ジェイソン・ステイサムは「アカデミー賞でスタント部門を儲けるべきだ」とスピーチして、実際に映画芸術科学アカデミーは前向きに検討しているとアナウンスしています。
劇中でコルトが「俺の人生はずっと誰かの助手席だった…」と語りますが、これまでの映画界においてスタントマンの地位は決して高いものではなかったのです。
物語の展開として多少強引だと思う箇所も正直ありましたが、それを差し引いても本作はVFXや生成AIの技術が発達する映像分野で、映画業界における大切なものを再認識するエンタメ作品となっています。
『フォールガイ』を是非劇場で体験してみてください。
そして、劇中で消えたハリウッドスター・トムのアシスタントであるアルマを演じたステファニー・スーは、1990年にカリフォルニア州トーランスで生まれました。
学生時代から舞台劇に興味があり演劇スクールに通い、コメディエンヌとしてキャリアをスタートして、MTVのリアリティ・コメディショーへのレギュラー出演で話題に。
その後、テレビドラマだけでなく映画界にも進出。そして『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で主人公の娘役のジョイと敵役のジョブの二役を演じて40以上の映画賞にノミネート。
アカデミー賞でも助演女優賞にノミネートされ一躍時の人となったのです。
彼女の祖母は内戦から逃れるために中国本土から台湾に移り住み、母親は台湾からアメリカに移住してシングルマザーとして彼女を育てました。
ステファニーの家は決して裕福ではなかったものの、演劇に目覚めたステファニーの為に母親は学費を捻出して彼女の成功を祈っていたのです。
多くの人は自分の目標に邁進する過程で挫折を経験します。
そんな時、自分の願望だけではなく誰かの思いが背中を押してくれる時もあるはず。
ステファニーは自分のために、そして母親の思いに応えるために地道に女優として活動して、遂にハリウッドでのAクラスセレブとなったのです。
フォールガイ
監督/デヴィッド・リーチ
出演/ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、ウィンストン・デューク、アーロン・テイラー=ジョンソン、ハンナ・ワディンガム、ステファニー・スー 他
公開/8月16日(金) 全国ロードショー
配給/東宝東和
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Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。