恐れずに思いを伝えることが、新たなステージへのステップに【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】

ジョン・ガリアーノの才能をいち早く認め、サポートを惜しまなかった雑誌編集者のアナ・ウィンター。

ハリウッド女優ではありませんが、映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたミランダのモデルと言われている、米国版「ヴォーグ」の編集長。

彼女のように、人との衝突を恐れずに自分の意見をハッキリと伝えるという生き様に学びたい。

映画「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」
アナ・ウィンター

2011年、ファッション業界の革命児と称されていたデザイナーのジョン・ガリアーノが、他人に対して反ユダヤ的暴言を吐くというヘイトクライム(憎悪犯罪)で逮捕されました。

本作は、そんなジョンが事件から13年の時を経て、自身の半生を語りつつ、なぜ愚かな発言をして社会的地位を失ったのかを赤裸々に語るドキュメンタリー作品。

「子供の頃、ファッションはエスケープだった」と、ジョン・ガリアーノは語ります。

幼少期から自分は他人と違うゲイだと悩み、父親からは暴力を振るわれることもあったジョンは、華やかな妄想で自分のアイデンティティを保っていたそうですが、その経験がデザイナーとしての礎だったのかもしれません。

新人デザイナーだったジョン・ガリアーノを知る人々は、一様に「彼は天才だった」と語ります。独創的なデザインとカラフルな色使い、そして来場者を驚愕させるコレクション演出は評判を呼びました。

しかし評論家などの評価はあれど、実用的ではなく高価なジョンの服は、あまり売れなかったそうです。

生地を買うのも困難だったジョンを、ファッション業界の重鎮であるアナ・ウィンターなどがサポートして、ジョン・ガリアーノ単独のファッションショーを大々的に開催。

モデルのナオミ・キャンベルやケイト・モスたちがノーギャラで参加したイベントは盛況で幕を閉じ、一気にジョンの名声は業界に知れ渡りました。

そして、ジバンシィ、その後にクリスチャン・ディオールのデザイナーとして活躍するのです。

キャリアの頂点を迎えていたジョンですが、酒癖が悪く、たびたびトラブルを引き起こします。

昔からの友人はインタビューで、「当時から“2人のジョン”がいた」と語っていますが、本人もアルコール依存症だったことを認めています。

そして、他人へ暴言を吐くという事件を起こしてディオールを解雇され、ファッション業界から去ることになったのです。

そして4年の歳月が経ち、本人も反省したというステートメントを発表したのちに、メゾン・マルジェラのデザイナーとして復活するのです。

プレッシャーを跳ね除けてファッション業界のトップに立ったジョンですが、ヘイトクライムという愚行で全てを失いました。

そんな彼の人生を追った本作を是非劇場で体験してみてください。

ジョン・ガリアーノの才能をいち早く認め、サポートを惜しまなかったのが、本作にも登場する雑誌編集者のアナ・ウィンター。

ロンドンで生まれた彼女は、10代の頃からファッションに目覚め、ショップ店員などを経て雑誌の編集アシスタントとして働き始めます。

そしてアメリカに渡り、雑誌のエディターとして様々な現場でキャリアを積んだのちに、米国版「ヴォーグ」のクリエイティブ・ディレクターに抜擢されます。

その後イギリスに戻り英国版「ヴォーグ」の編集長、そして再びアメリカに戻り米国版「ヴォーグ」の編集長となるのです。

(ちなみに『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたミランダは、アナがモデルだと言われています)

ハイブランドのファッションショーでは、トレードマークであるボブカットに大きいサングラスで最前席に座るアナ・ウィンターを、なにかの映像で見たことがある方も多いと思います。

今ではファッション・アイコンとして世界的セレブリティとなったアナですが、若い頃は上司との争いが絶えず、編集者としていくつもの雑誌を渡り歩いています。

日本では学校や職場での自己主張が強すぎると疎まれる傾向もありますが、アナのように職場の上司や同僚と意見が食い違い衝突したとしても、自分の意見をハッキリと伝えることが大事な時もあるはず。

己を押さえ込みすぎず、強い思いや考えがあったら、率直かつ建設的に相手に伝えるという生き様が、貴方を違うステージに導くステップとなるかもしれません。

ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー

監督・プロデューサー/ケヴィン・マクドナルド

出演/ジョン・ガリアーノ、ケイト・モス、シドニー・トレダノ、ナオミ・キャンベル、ペネロペ・クルス、シャーリーズ・セロン、アナ・ウィンター、エドワード・エニンフル、ベルナール・アルノー

公開/9月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町 他

© 2023 KGB Films JG Ltd

Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)

Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。

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