自身の困難と誠実に向き合い、着実に前に進むことが大切。【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】

ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』と、日本では今年の1月公開された『哀れなるものたち』で
アカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。

7歳の頃から不安障害とパニック障害を抱えていて現在でもセラピーを受けているという彼女の、成功の裏側にある努力、そして、自身の困難と誠実に向き合い、着実に前に進んだことで結果を掴み取る姿に学びたい。

映画「憐れみの3章」
エマ・ストーン

自らの選択肢を奪われながらも必死に人生を取り戻そうとする男の話。

海難事故から生還したら妻が別人のようになってしまって恐怖を抱く警察官の話。

そして、教祖になることが運命の人物を必死で探し求める女性の話。

この3つの奇想天外な物語が織りなす作品で、各章は基本的に独立したストーリーなのですが、キャストはそれぞれの章で異なる役柄を演じています。

ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督は、現在世界で最も注目を集めている映画監督の一人なのですが、そんな彼が実験的に制作した本作の3つの独立した物語は、それぞれ複雑な人間模様が入り組んだストーリーです。

同じキャストが各章で別キャラクターを演じるという監督の“作戦”により、交わらないはずの物語が次第に繋がる感覚を覚えます。

そして主要キャストを演じたエマ・ストーンの存在感は、他の俳優の追随を許さぬほどの光を放っています。

「この物語は人間の条件と行動についてのすべてだ」とランティモス監督は述べていますが、これまでの彼の作品や本作での3章に通底するのは、他人との距離感の不安定さと、“記号としての統率者”からの抑圧と解放だと感じました。

本作はシリアスなテーマを題材にしながら、そこには皮肉と笑いが含まれていて、ジャンル(作風)で囲うことは難しい作品です。

強いて言うのならば、“ヨルゴス・ランティモス”という名のジャンル映画かもしれません。

オリジナルを極めた本作を是非劇場で体験してみてください。

そして本作に出演する、エマ・ストーンは、アメリカ・アリゾナ州で生まれ、11歳の時に舞台デビューしました。

その後、数多くの演劇に出演して即興コメディ舞台にも参加。

そして本格的に女優になることを志し、高校を中退して15歳の時に母親と一緒にロサンゼルスへ移り住むのです。

エマはタレントを発掘するバラエティ番組に出演したことで注目を浴び、オーディションやドラマ出演の話が舞い込むようになりました。

そして19歳の時に『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で映画デビューすると、その後様々な喜劇映画に出演。幼い頃の即興コメディの経験が最大限に活かされたのです。

そして『ゾンビランド』への出演で知名度を上げ『小悪魔はなぜモテる?!』で初めて主演となり、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされるのです。(本作の「辛い時はユーモアで乗り切るのよ」という台詞は個人的に大好きな言葉)

その後は、『ステイ・フレンズ』、『ラブ・アゲイン』、『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』などの話題作に出演した後に『アメイジング・スパイダーマン2』への出演で世界的認知度を得て『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。

そして彼女のキャリアを決定づけたのが『ラ・ラ・ランド』で、遂にエマはアカデミー賞主演女優賞を受賞するのです。

ヨルゴス・ランティモス監督とタッグを組んだ『女王陛下のお気に入り』では、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、再びランティモス監督と撮影した『哀れなるものたち』で再びアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。

順調なキャリアを築いてきたエマ・ストーンですが、第96回アカデミー賞でオスカーを受け取る際に、視聴者が少し心配になるほど狼狽してしまいました。

実は彼女は7歳の頃から不安障害とパニック障害を抱えていて現在でもセラピーを受けているのです。

エマはこれまでも緊張する場面で自分を制御ができない場面がありました。しかし自身の困難と誠実に向き合い、女優として着実に前に進んだことで結果を掴み取ってきたのです。

そんなエマ・ストーンの姿に励まされる方は多いと思います。そして僕はそんな彼女を尊敬しているのです。

憐れみの3章

監督/ヨルゴス・ランティモス

出演/エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファー 他

公開/9月27日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他

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Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)

Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。

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