
緊張は決して悪ではなく、時に人を成長させるきっかけに【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】
大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』で、女性パイロットのフェニックス役を演じたモニカ・バルバロ。オーディション会場でトム・クルーズと初めて対面した際には、自分の名前が出なくなるほど緊張したそう。
その彼女が、今作『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』では、アカデミー賞助演女優賞にノミネート。
誰しも緊張してミスをすることはあるはず。しかし、その後の経験や修練で大きく成長できるということを学びたい。
映画「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」
モニカ・バルバロ
1961年の冬、ミュージシャンとして成功するためにニューヨークの地へ降り立ったミネソタ出身の青年ボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)は、恋人となるシルヴィ(エル・ファニング)と出逢い、歌手のジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)や先輩ミュージシャンたちから刺激を受けつつ、フォーク・シンガーとして頭角を現すようになります。
そしてライブハウスなどでの活動を経て、彼の存在は世間の注目を集めるようになり、やがて「フォーク界のプリンス」と呼ばれるようになるのです。
しかしボブ・ディランは次第に大衆と自己認識のズレに違和感を抱くようになります。そして1965年、大規模な音楽祭であるニューポート・フォーク・フェスティバルに出演するのですが…。
現在でも音楽活動を続けているボブ・ディランは齢83歳なので、僕はリアルタイムで彼のキャリアを追い続けてきたわけではありませんが、多くの名曲を世に放ち、グラミー賞やアカデミー賞そして2016年にノーベル文学賞を受賞した栄誉は当然知っています。
そんなボブ・ディランのしゃがれた歌声はとても印象的ですが、彼を演じたティモシー・シャラメは5年間のボイストレーニングに励み、ギターとハーモニカも習得。
そして劇中で40曲もの生歌を披露して観客や映画批評家から絶賛を受けているのです。
(ちなみに本作は第97回アカデミー賞で作品賞など計8部門にノミネート。ティモシー・シャラメは主演男優賞にノミネートされました)
タイトルの 「A COMPLETE UNKNOWN(名もなき者)」は、ボブ・ディランの名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」に出てくる歌詞なのですが、その歌詞の通り、田舎町から夢を抱いて都会に出てきた名もなき青年が、人の心に届く曲を作り、ライブでは熱狂的な観客を集める唯一無二のアーティストとなったのです。
劇中でのフェスで、ボブ・ディランは観客の求める曲は決して歌わず、ファンからブーイングを浴びます。まだ20代のボブ・ディランは大衆に背を向け、過去を顧みず、ただ未来を見据えていたのです。
何者でもなかったボブ・ディランが、いかにして時代の寵児となったのかを描く本作を、是非劇場で体験してみてください。
そして、今回クローズアップしたのは、ボブ・ディランとの音楽上のパートナーである女性フォーク歌手ジョーン・バエズを演じたモニカ・バルバロです。
彼女は、1990年にアメリカ・カリフォルニア州で生まれました。幼少期からダンスやバレエを学び、ニューヨーク大学の芸術部に入学してダンスの学位を取得します。卒業後にカリフォルニアに戻り、本格的に女優を目指して演劇学校に通いつつ、2012年にTV映画「私が愛したヘミングウェイ」でデビュー。
しかしその後、モニカは大役を得ることができず、短編映画やTVドラマの脇役などを経験するのです。
そんな彼女の人生を大きく変える作品となったのが、世界的に大ヒットした『トップガン マーヴェリック』です。モニカはオーディションを経て、女性パイロットのフェニックス役を演じて世界的に注目を浴びたのです。
『トップガン マーヴェリック』のオーディションを受けていたモニカ・バルバロは、会場でトム・クルーズと初めて対面した際、緊張して足の感覚がなくなり自分の名前が出なくなるほど緊張したそうです。
しかし役を得たモニカは、クランク・イン前に緊張した自分を克服するべく、5ヶ月のパイロット訓練を受けて自信をつけ、フェニックス役を好演。
そして『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』では、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。
誰しもが新しい環境や慣れない仕事をする時は緊張するはず。しかしその後の経験や修練で成長できます。決して緊張は悪ではなく、時に人を成長させるきっかけでもあるのです。

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN
監督/ジェームズ・マンゴールド
出演/ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクート・マクネイリー 他
公開/2月28日(金)より
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Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。