
他人の目を過剰に意識せず、ありのままを受け入れる【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】
アリ・アスター監督作『ミッドサマー』で主演を果たし、世界的にその存在を知らしめた女優・フローレンス・ピュー。自分自身をありのままに受け入れることで、心ない批判に対しても毅然とした態度で向き合う。
そんな彼女の前向きな生き方を育んだ家族、そして、彼女自身が発表した声明からも学ぶべきことは多い。
映画「We Live in Time この時を生きて」
フローレンス・ピュー
将来を嘱望されている新進気鋭の一流シェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、妻との離婚を決意していたトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)は、交通事故をきっかけに出逢い親密な関係になるのですが、自由恋愛を楽しみたいアルムートと将来を見据えた関係を望むトビアスは衝突を繰り返します。
しかしお互いが歩み寄り、二人は正式な夫婦となり子供を授かります。その後、娘の成長を見守りながら幸せの絶頂だった二人でしたが、ある日医者からアルムートの余命が僅かだと告げられるのです。
いわゆる“余命物”と言われる小説やドラマ、そして映画はこれまでも数多く創作されてきましたが、本作は単純な余命物ではなく、逝く人と見送る人それぞれの人生の生き方と心構えを観客に力強く提示する傑作です。
この作品の説得力に寄与したのが、主演であるフローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールドの卓越した演技。
俳優は演じるのが仕事であり、ハリウッドの最前線で活躍する二人の芝居が上手いのは当然ですが、アルムートとトビアスを演じた二人の掛け合いは一瞬たりとも目が離せない特別な時間でした。
本作は時系列が前後する恋愛映画なのですが、構造としてファンも多い映画『(500)日のサマー』の大人版として捉えることができるかもしれません。
アルムートとトビアスは互いの主張の相違から喧嘩になりますが、トビアスは関係を修復するためにアルムートに対して「先を見過ぎていた。僕が見るべきなのは目の前の君だった。」と謝罪します。
自分自身の価値観や目標に対する確固たる確信は人それぞれですが、愛し合っている二人ならば相手を慮ることで共存できるのです。
愛する人との出逢いは“偶然”なのか“必然”なのか? その答えは分かりませんが、出逢えたことが幸運であり、もし相思相愛の相手と添い遂げられたら奇跡なのです。
いずれ誰しもが直面する人生の最後をどう迎えるのか? という深いテーマを丁寧に描いた本作を、是非劇場で体験してみてください。
本作でアルムートを演じたフローレンス・ピューは、イギリスのオックスフォードで生まれ、スペインでの生活を経てイギリスに戻り、スクールで演技を学びました。
そして18歳の時にミステリー映画『フォーリング 少女たちのめざめ』でデビューを果たし、20歳で主演した『レディ・マクベス』が多くの観客や批評家から絶賛されます。
その後『ファイティング・ファミリー』出演後に、世界的に評判となったアリ・アスター監督作『ミッドサマー』主演で世界的に存在を知らしめ、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされます。
そして、大作映画『ブラック・ウィドウ』出演でAクラスセレブの仲間入りとなったのです。
順調にキャリアを積んできたフローレンス・ピューはその後、『ドント・ウォーリー・ダーリン』、『オッペンハイマー』、『デューン 砂の惑星 PART2』、そして『サンダーボルツ』などの世界が注目するビッグバジェットムービーに参加するのです。
フローレンス・ピューは多くの若いハリウッド女優と比べると若干ふくよかな体型をしていることで、ネットで誹謗中傷が飛び交った時期もありましたが、彼女は批判者に対して「女性が他人から自分のボディについて欠点を指摘されるのはこれが初めてではないし、もちろん最後でもないでしょう。
自分は強くパワフルでふくよかな女性ばかりの家庭で育ち、体のしわも誇らしく思うように育てられたので幸せです」と正式なステートメントを発表しました。
もちろん自分の理想の体型はあると思いますし、健康的な身体の維持は重要ですが、フローレンス・ピューのように他人からの目を過剰に意識することなく、ありのままの体型を受け入れて前向きに生きることも大事だと思うのです。

We Live in Time この時を生きて
監督/ジョン・クローリー
出演/フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド 他
公開/6月6日(金) 全国ロードショー
©2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。