驚きに満ちた舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を、体感してほしい【吉沢 悠】
─── 2022年よりロングラン公演を続けている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の総観客数が100万人を突破。専用劇場でのストレートプレイとしては日本初となる快挙を成し遂げた。
そして、2024年7月から上演されている第3期キャストでハリーを演じるのは吉沢悠さん。「この役を絶対にやりたい」と切願したというその理由から伺った。
ハリー・ポッターは世界中で愛されている作品です。
その中のハリー役を演じられるチャンスなんて滅多にありません。しかも演じるのは37歳になった大人のハリー。
自分の年齢を考えても、このハリーを演じられるのは今がベストタイミングであり、最大のチャンスだと思ってオーディションに挑みました。
─── そして見事ハリー役を射止めた吉沢さん。稽古が始まるまでの時間はハリー・ポッターの世界観を理解することに時間を費やしたのだとか。
まずは映像でハリー・ポッターシリーズを全作観返しました。
ファンタスティックビーストも含め、魔法界で起こってきた出来事を自分の中で整理しながら、わからないことがあれば観返すということを繰り返しました。
演じるハリーは37歳ですが、そこまでの成長過程を知った上で人物像を理解したかったんです。
─── ロンドンのパレス・シアターにも足を運びイギリス公演も観劇されたそう。
イギリス版でしか観ることができないシーンがあるのですが、それを観たことで世界観が広がりました。
何よりハリー・ポッターシリーズを生み出した国の空気感を感じることができて良かったです。
劇場を出てもまだハリーの世界が続いているような街の雰囲気や、紳士的な人たち。街を歩いていても自然に誰かに手を差し伸べたり、素敵だなと思える場面にあらゆる所で出会うんです。
そんな素敵なイギリス人の気質を数日間という短い間でしたが感じることができたのは大きな収穫になりました。
─── 物語の舞台はハリーたちが魔法界を救ってから19年後。3人の子の父となったハリーだが、ホグワーツ魔法学校に入学する次男のアルバスは英雄の家に生まれた自分の運命に抗うように反抗的な態度をとる。
幼い頃に両親を亡くしたハリーは父親としてうまく振る舞えず、関係を修復できないまま、魔法界に新たな黒い影が忍びより… というストーリー。
映画の中のハリーは、ヴォルデモートという強力な闇の存在を倒したヒーロー的存在という印象が強いと思いますが、今作でのハリーは、家族のことで悩んだり、夫婦で子育てに対する意見が違ったり、より人間味のある人物として描かれています。
彼が19年間どんな経験をしてきたのか、人間関係を含めて細かい描写がしっかりと描かれているところがこの作品の大きな魅力であり、老若男女問わず多くの人に愛されている理由だと思います。
─── 稽古を進める上で、新しい気付きもあったと吉沢さんは続ける。
ハリーはヒーローだからこそ、一挙一動に注目されてしまうし、話題になってしまう。言わばずっと世間にさらされている存在なんです。
演出補のエリックさんから“彼はハリー・ポッターという仮面をかぶっているのかも?”というお話を聞いたとき、なんて面白い解釈なんだろうと思ったと同時に、きっと孤独なのではないかとも思ったんです。
ヒーローでい続けなければいけないプレッシャーや、肩の荷を下ろして素顔を見せられる相手がいない…。
そんな悩みや葛藤を抱えているハリーを、稽古を通して作り上げていきました。
─── 吉沢さんも“見られる側”の職業。自分に重なる部分もあったのでは?
まったく素が出せないということはないのですが、どこか似ている要素はあるのかもしれませんね。
噂に敏感で何か行動を起こすとすぐ新聞に載ってしまう魔法界と、噂が出ると良い意味でも悪い意味でもSNSなどで一気に拡散されていく今の時代…、似ているかもしれません(笑)。
僕が素を見せる瞬間?そうですね…、犬を触っているときかな(笑)
─── 熱狂的なファンを持つハリー・ポッターにちなみ、吉沢さんが熱狂的にハマっていることを伺うと、「殺陣(たて)」というお答えが。
日本の俳優として殺陣を学ぶことは芝居にも役立つのではと思い始めたのですが、技術もさることながら、8割くらいは人間形成を説いてもらっています。
物事の捉え方や世の中の見方を深く考えることで、意識が大きく変わるんです。
その奥深さにハマって続けています。
─── 最後にあらためて本作の見どころを伺うと「魔法です!」と即答が。
映画で観た数々の魔法が目の前で体感できるのは、このTBS赤坂ACTシアターだけなんです。
劇場に足を踏み入れた瞬間に感じられるハリー・ポッターの世界観もさることながら、芝居が始まれば驚くほどの没入感で“魔法”を体感してもらえるはず。
ハリー・ポッターファンの方はもちろんですが、これまでのストーリーを知らなくても楽しめる仕掛けがいっぱいなのでぜひ劇場に足を運んでほしいです。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
オリジナルストーリー/J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー/ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー/ジョン・ティファニー
出演/ハリー・ポッター:平方元基・吉沢悠、ハーマイオニー・グレンジャー:木村花代・豊田エリー、ロン・ウィーズリー:石垣佑磨・ひょっこりはん・矢崎広、ドラコ・マルフォイ:内田朝陽・永井大・姜暢雄、ジニー・ポッター :白羽ゆり・大沢あかね 他
公演/上演中~2025年2月末
上演時間/3時間40分 ※休憩あり
会場/TBS赤坂ACTシアター
吉沢 悠
1978年生まれ。「青の時代」でドラマデビュー。その後「動物のお医者さん」で初主演を務める。以降、映画、テレビ、舞台などで多岐にわたり活躍。近年では11月1日(金)公開の映画『十一人の賊軍』に出演するほか、2025年放送開始の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」への出演も決定している。