
AI時代のキャリアの不安にどう向き合う?今日から実践・3方向の成長戦略【前編】
Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】
AIの登場により「手に職さえあれば一生安泰」という以前のキャリア観は壊れ、定型作業の多くは自動化・高速化され、“きっちりこなすだけの人”ほど代替されやすい時代に突入しています。
最近、生成AIや自動化のニュースを見るたびに、
「AIに自分の仕事が奪われるかも……」
「このままだと自分の市場価値は下がってしまうかも……」
という不安が押し寄せる人も少なくはないでしょう。でもその不安は「私たちが次に何を学ぶべきか」を教えてくれるコンパスです。
そこで今回は、AI時代を乗りこなし、変化に負けないキャリアを築くための“3方向の成長戦略”についてご紹介します。
キャリア成長は「広げる・深める・高める」の“3方向”に分類できる

まず、「成長」の定義を整理しましょう。
キャリアの成長とは、自分を「広げる・深める・高める」という3つの方向に伸ばすことです。
- 広げる: 知識や経験、人脈の幅を増やし、新しい世界に触れる回数を増やすこと。
- 深める: 専門性や洞察力、そして自分自身への理解を磨き、物事の本質を掘り下げていくこと。
- 高める: 意思決定の視点を上げ、影響する範囲や生み出す成果の質を高めて、より大きな価値を生み出すこと。
この3方向のどれか一つに偏ってしまうと、成長はどこかで歪みが生じます。幅だけ広がると中身が浅くなったり、深さだけを求めると視野が狭まったり、高さばかりを追うと現場の感覚を失ったりします。
この3つのベクトルがバランスよく伸びるほど、あなたのキャリアはしなやかで、変化に強いものになるのです。
そして、成長を目指すうえでのもう一つの大切なポイントは、AIとの上手な分業を設計すること。
AIはすでに知っている情報を高速で処理し、横展開するのが得意です。しかし、新しい分野に踏み込む幅(広げる)、状況に合わせて本質を捉える洞察力(深める)、そして人を巻き込みながら価値を最大化する統合力(高める)は、私たち人間が強みを発揮できる領域です。
目の前のツール操作だけに留まらず、自己成長を“3方向”でデザインし、「AIに使われる人」ではなく「AIを使いこなす人」になりましょう。
なぜ今、“広げる・深める・高める”が必要なの?

その理由は3つあります。
一つ目は、AIが仕事の「ルール」そのものを変えつつあるから。ルーティン作業などはAIに任せて、人間は未知への挑戦(広げる)・本質の洞察(深める)・価値の拡大(高める)に力を入れることで、相乗効果を生み出せるのです。
二つ目は、市場から求められているから。AIを活用できるスキルの有無は、給与や採用などに明確に影響を与え始めており、AIを学ばないことの機会損失は確実に広がっています。
そして三つ目は、時代の変化の中で私たちのキャリア観も変わったから。一つの会社やスキルに依存するリスクが高まっているため、これからは「自律して学び続ける人」でなければ生き残れない可能性が高いです。
AIに対する不安は、裏を返せば「何を学ぶべきか」を教えてくれる指針。
次の章から後編の記事にかけてお伝えする“3方向”の成長戦略を通して、バランスよく自分のキャリアの成長を設計し、不安を「力」に変えていきましょう。
【広げる】新しい世界に挑戦し、“横断力”を作ろう

この章の目的は、横断力(境界を越えて、新しい結びつきを作る力)を身につけることです。AIが一般化するほどに、一つの道だけで「正解を当てる」という価値は薄れていきます。
今、私たちが本当に手に入れるべきは、「他分野×自分の専門分野」や「顧客の文脈×技術」「現場の課題×経営の視点」のように、異なる要素を横断して結びつけ直す力。
そのためには、①学び、②経験、③道具を”広げる”必要があるのです。
①学びを広げる:テーマは「隣接×遠心」
まずは、今の仕事に近い分野(隣接領域)を広げることから始めましょう。たとえば今マーケティング職に就いているならデータ分析や統計の基礎、エンジニアならプロダクトマネジメントやUXなど、すぐに仕事に活かしやすい知識から幅を広げていきます。
次に、少し遠いけれど興味のある分野(遠心領域)へと手を伸ばしていきましょう。先ほどの例で言えば、カルチャーや心理学、行動経済学、デザイン思考などです。遠い知識やスキルを学ぶと、思わぬ発想が浮かびやすくなります。
これらのテーマは学ぶだけでなく、実務で活かせるよう意識して、学びながら仕事のやり方を柔軟に変化させていくことが大切です。
②経験を広げる:役割・場・文化を変えてみる
経験を広げるには、仕事での役割を少し変えてみることが手っ取り早い方法です。
社内で役割のローテーションを打診したり、業務外で手伝える小さなタスクから任せてもらったり、副業として社外のプロジェクトに参画したりしてみましょう。
新しい役割では、他の仕事にも活かせる「新しい視点」を手に入れられるはず。参画する際には、今持っている強みで先に価値提供することを意識してみてください。
また、身を置く場と文化を変えるのもオススメ。興味のあるコミュニティや勉強会に参加し、普段関わらない職種や世代の人とコミュニケーションをとってみましょう。
③道具を広げる:AIを“相棒”にして効率アップ
AIや自動化ツールというと難しく聞こえるかもしれませんが、目的は一つ。それは、「AIを自分の相棒にして、考える時間や新しいことに挑戦する時間を作ること」です。
アイディア出しやレポートの構成案、会議の要約など、考える前の準備作業や日々の定型作業をAIや自動化ツールに任せることから始めてみましょう。小さいけれど積み重なると時間や労力がかかるタスクこそ、効果を実感しやすいはずです。
自分が手を動かさなくてよいタスクをAIに任せると、あなたが本来力を入れるべき「自分の経験や文脈を踏まえて判断する」「伝わる言葉へと編集する」「新しいことに挑戦する」といった分野に集中できるようになります。
後半へ続く、不安を力に変える“深める・高める”戦略

今回は、AI時代の変化に負けないキャリアを築くための考え方と、“広げる”ための具体的なアクションをご紹介しました。
自分の経験や専門分野に他の要素を掛け合わせる「横断力」は、AI時代にあなたの可能性を広げてくれるはずです。
今回の続きとなる後半の記事では、“深める”と“高める”の成長戦略について詳しく掘り下げていきます!(※10/27(月) 8時に公開予定)
編集部・アイ
人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

