
『広・深・高』の3方向で自分だけのキャリアを作る!その進め方と注意点【後編】
Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】
AI時代を自分のペースで生き抜くために必要な、「広げる・深める・高める」という3つの成長戦略。前編では【広げる(=新しい世界に挑戦する)】ための具体的なアクションをお届けしました。
後編となる今回は、【深める(=AIに真似できない自分だけの価値を作る)】、そして【高める(=自分の価値を最大化する】という2つの戦略を掘り下げます。
専門スキルの精度を上げる方法や成果を出すための視座の上げ方など、「知識」を「力」に変える実践的なヒントに加え、最後には3つの戦略を効率よく進めるためのロードマップと注意点もご紹介します。
AIや未来への不安を力に変えて、自分だけの確かなキャリアを築きましょう!
【深める】核を研ぎ澄まし、“替えの利かない価値”を作る

この章の目的は、自分ならではのこだわりや、状況の本質を見抜く力などを深めて「替えの利かない価値」を作り出すことです。
AIがあらゆる情報を持つこれからの時代、私たち人間は状況に合わせた本質的な判断で勝負する必要があります。
そのために、次の3つの層を通して自分自身を深め、替えの利かない価値を作り出しましょう。
①専門スキルの精度を上げる
まずは、あなたの仕事の中核となるスキルの精度を上げていきましょう。
スキルを伸ばすには、「体系書を読む・調べて学ぶ→実践→結果の振り返り→再度学ぶ」というサイクルを、3ヶ月〜半年単位を目安に回すのがオススメです。
たとえば、
- データ分析なら:統計や因果関係の考え方
- マーケティングなら:リサーチ設計と仮説検証
- デザインなら:ユーザーテストの方法
など、「AIを使う選択肢もあるけど、この分野はあの人に任せたい」と思ってもらえる、確かな成果を出せるスキルを手に入れることから始めましょう。
②価値観と志を明確にし、意思決定スピードを上げる
日々の実務の中で「なぜ嬉しいと感じたのか」「なぜ違和感を覚えたのか」などを掘り下げて記録し、月に一度ほど棚卸しを行って大切にしたい価値観を明確にしましょう。
さらに、
- 何のためにその仕事をしているのか
- 誰のどんな困りごとを解決したいのか
- 自分の強みは誰の役に立つのか
などの“志”を定期的に自分に問いかけたり、多様な人が集まる場に参加して、自分の価値観を相対的に確認したりするのもオススメ。
章の冒頭でもお伝えしたように、これからの時代に人間がすべきことは「状況に合わせた本質的な判断」です。大切にしたい価値観や志が明確になると、意思決定のスピードが上がり、本質的な判断を速くできるようになります。
③課題発見力を上げる
AIは与えられた問題を解くのは得意ですが、その前段階の「何が問題か」を定義するのは、現場に身を置く人間の仕事です。
たとえば、毎週自分の担当領域の
- 顧客行動の変化
- ボトルネックの仮説
- それを踏まえた小さな検証案
などを出し、翌週に結果を振り返る習慣をチームで作ってみてはいかがでしょうか。このような習慣は、課題発見力を上げる良い練習にもなります。
【高める】視座を上げて、“生む価値の大きさ”を広げる

この章の目的は、成果のスケール(影響する範囲や持続性)を大きくすること、視座を上げて「あなたがチームに入ると必ず成果が上がる」という期待を作ることです。
そのために①経営視点、②影響力、③プラスアルファの3つを通して、あなたの価値を高めていきましょう。
①一番大切な目的から逆算する、経営視点を持つ
仕事に取り掛かるときには、毎回「このタスクは、誰のどんな困りごとを、どの目標(KPI)めがけて、どれだけ前に進めるのか?」と上位目的から逆算して考えましょう。
もしタスクの目標(KPI)が曖昧なら、取り掛かる前にまず「どんな成果を出すか」を明確にし、関係者と合意すること。
また、「全体にとってベストか?」という全体最適の視点を普段から意識することも、視座を上げる良い訓練になります。たとえば現場の改善を提案する際にも、それが会社の利益にどう繋がるか、今やらないと後々どれだけ損をするか、なども考えてみましょう。
②発信・巻き込み・後輩育成で、影響力をつける
AIが知識を持ち“真似できる”時代だからこそ、これからさらに「誰が言っているか」が力を持ちます。その影響力を手に入れるには、信用が積み上がる発信力・周りを巻き込む力・後輩を育てる経験が必要です。
まずは、以下から始めてみてはいかがでしょうか?
- 自分の専門知識や知見を、社内の勉強会や個人のメディア(noteなど)で継続して発信する
- 小さなプロジェクトの主催者側に回る(関わる人たちの期待値調整をしつつ、スムーズに合意形成を進める方法を身につける)
- 自分の仕事を若手や後輩に教え、任せる(自分の言動が相手にどう影響するかを学べるだけでなく、自分の思考の穴を可視化することもできる)
③プラスアルファの価値を加える
仕事でもプライベートでも、頼まれた通りに行うだけではなく「プラスアルファの価値」を加えることを意識しましょう。
たとえば納品物に「代替案」や「次のアクション」「誰でも再現できる手順」を添えて返したり、チーム全体の仕事のスピードを上げる仕組み(テンプレートや自動化)を提案したり、などです。
3方向の成長戦略の実践ステップと注意点

前回から今回にかけて、「AIに仕事が奪われるのでは?」「自分の市場価値が下がるのでは?」と不安を抱いている方へ【時代の変化に負けない“3方向の成長戦略”】を具体的にお伝えしてきました。
この章では、前回の記事の【広げる】編から、今回の記事でお伝えした【深める】【高める】編の実践ステップと、先に知っておきたい3つの注意点をご紹介します。
進む前に知っておきたい、3つの注意点
「広げる・深める・高める」をそれぞれ伸ばすには、下記の3つへの注意が必要です。
- 好奇心に従って幅を広げるだけで終わらせず、成果に繋げることを意識する
- 専門性を深めるあまり、視野が狭くならないよう注意する
- 視座を高めることに集中しすぎて独りよがりにならないよう、現場にもしっかりと足をつける
3つの点に不安を感じる方は、「なぜキャリアを見直そうと思ったのか?」「広げる・深める・高めるを始めたい動機は何か?」「どのようなゴールを目指しているのか?」などを最初に言語化しておくと、迷ったり進む方向を間違えたりしてもすぐに再出発できるはずです。
【1ヶ月目・準備】現状を「見える化」する
- 現在地を知る(今の自分のスキルを棚卸しをする)
- 時間を作る(学ぶための時間を確保する)
- AIに任せることを決める(要約、構成案、ブレストなど依頼範囲を明確にする)
- 3方向それぞれの目標を設定する(広げるために外部との接点を1つ獲得する、高めるために勉強会を1回開催するなど)
【2〜4ヶ月目(90日)・広げる】新しいことに挑戦し、横断力を身につける
前回の記事の『【広げる】新しい世界に挑戦し、“横断力”を作ろう』を参照し、学び・経験・道具を広げて、異なる要素を横断して結びつけ直す力を育てましょう。
- 実践サイクルを回す(90日間で学び直す計画を立て、学ぶ→実際に仕事に使う→結果を共有するサイクルを回す)
- 異なる分野や世界にチャレンジする(社外や業務外のプロジェクトに1件参加するなど)
【5〜7ヶ月目(90日)・深める】核となる力を磨く
- スキルを1〜2つ深め、事例を作る(専門スキルに関する手順書・テンプレ・効果測定の結果などをまとめ、実績化する)
- 自分が大切にしたい価値観や志と判断軸を明確にする
- 2週に1回など回数を決めて、課題発見から検証までの習慣を身につける
【8〜10ヶ月目(90日)・高める】影響力を上げる
- 発信・巻き込み・育成それぞれに関して積極的に動く(月に1度個人のnoteで発信する、90日の間でプロジェクトを1回主催する、後輩のメンター役を引き受ける、など)
- 毎回の会議で1回は、全体最適で発言する
『広・深・高』で、AIに奪われない“自分だけのキャリア”を築こう

全2回にわたり、AI時代に負けない「変化に強いキャリアの土台」となる3方向の成長戦略をご紹介しました。
不安を力に変えるには、自分の価値観を基準にしながら、「広げる・深める・高める」の全てにバランスよく取り組むことが大切です。
未知との接点を増やし、核を研ぎ澄まして、自分だからこそ提供できる価値を発揮していく。その積み重ねを、AIという相棒に力を借りながら楽しみ、自分だけのキャリアを築いていきましょう!
編集部・アイ
人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

