
疲れを取る方法探しより、疲れにくい毎日作りを。セルフプリザベーションの活用法・前編
Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】
仕事は好き。やりたいこともある。休日には気になっていたカフェへ出かけたり、自分へのご褒美にスキンケアを新調したり。
自分なりにリフレッシュする時間を作っているはずなのに、なんだかずっと疲れている。そう感じることはありませんか?
たとえば、底に穴が開いて水が漏れているバケツにいくら水を注ぎ続けても、塞がなければすぐに減ってしまいますよね。私たちの生活も、それによく似ています。
朝から通知に追われ、予定を詰め込み、人に気を遣い、帰宅後もSNSを見続ける。一つひとつは小さなことでも、それらが積み重なり、エネルギーが少しずつ削られているのです。
今の私たちに必要なのは、「疲れを取る方法を模索する」よりも「疲れにくい毎日」を作ること。そこで今回は、セルフプリザベーションを活用した新しいセルフケア方法をご紹介します。
セルフプリザベーションで「もっと疲れにくい毎日」を作ろう

セルフプリザベーション(Self Preservation)とは、「自己防衛」や「自己保存」を意味する言葉で、自分の存在や心身を守るための行動や反応を指します。
これを生活に取り入れて、疲れてから回復させるのではなく、自分のエネルギーが必要以上に減らないよう、疲れにくい生活へと見直してみましょう。
勘違いされがちですが、目的は「頑張ることをやめるため」ではありません。
長くも短い人生の中で、有限なリソース(時間・お金・エネルギー)を効果的に活用し、好きな仕事や大切な人との時間、自分らしい挑戦をできる限り長く続けていくためです。
「もっと休まなきゃ」と思う前に、「もっと疲れにくい毎日」を作るという発想へ。次の章からは、セルフプリザベーションを取り入れた新しいセルフケア方法をくわしくご紹介します。
【1歩目】「細かなストレスが多すぎる」と視点を変える

「今日は特別忙しかったわけではないのに、なぜか何もする気が起きない」そんな日が続くと、「年齢のせいかな」「体力が落ちたのかも」と思ってしまいがち。しかし実際には、大きな出来事がなくても、人は毎日少しずつエネルギーを失っています。
心理学では、小さなストレスが積み重なる現象を「マイクロストレス」と呼びます。一つひとつは取るに足らないように思えても、その数が増えるほど心や体への負担は大きくなるのです。
たとえば朝。目覚ましを止めた瞬間に、スマートフォンの画面に並ぶ通知が目に入り、すぐに返信するか後にするか迷う。満員電車では他人に囲まれ、今日の夕飯は何にするか悩む。職場へ着くとメールやチャットが絶え間なく届く……。
それぞれは大きなストレスではありませんが、朝起きた瞬間から夜眠る直前まで、脳は休む暇なく情報を処理・判断し続けています。その積み重ねは確実に、そして静かに、集中力や気力を消耗させていくのです。
それなのに私たちは、「もっと頑張っている人もいるから」「自分の能力が足りないから」などと、自分の疲れを軽く見積もり、気合いや根性で乗り越えようとしてしまいます。でも本当の原因は、そこにはありません。
セルフプリザベーションの第一歩は、「生活の中に細かなストレスが多すぎるから疲れているのかも」と視点を変えること。
その細かなストレスを一つひとつ取り除いていくことで、疲れにくい毎日は作れるのです。
【2歩目】生活の中の「エネルギー漏れ」を見つける

もし財布に小さな穴が開いていたら。一日に何千円もなくなるわけではなくても、硬貨が穴を少しずつすり抜け、お金が減っていきます。そしてある日、「こんなに使った覚えはないのに!」と驚くことになるでしょう。
私たちのエネルギーも、それとよく似ています。大きな出来事で一気に消耗するだけではなく、日々の何気ない行動によって、少しずつ漏れ続けているのです。しかも、お金と違ってエネルギーは目に見えず、自分でも気づきにくいのが厄介なところ。
この章では、生活の中の「エネルギー漏れ」を探し、その穴を塞ぐ術を考えましょう。
ポイントは、不要な判断や無意識に続けている負担を「とにかく減らす」ことを前提に考えること。エネルギーが漏れる穴を小さくするイメージで、自分がどこでエネルギーを使い過ぎているのかを振り返ってみましょう。
ここからはエネルギーが漏れやすいシーンと、その穴を塞ぐひとつの案を簡単にご紹介します。
◻︎服装をパターン化して疲れを防ぐ
たとえば、毎朝クローゼットの前で「今日は何を着よう?」と悩む時間。
たった数分の間に、「この服で暑くないかな」「仕事で浮かないかな」といくつもの視点から考え、その度に脳は判断するためのエネルギーを使います。
こうした選択疲れは、服装をある程度パターン化することで防げます。毎日膨大な判断をしなくてはならない経営者の方々が、選択疲れを防ぐためによく取り入れている手法です。
◻︎食事は休日に作り置きする・冷凍食品をうまく取り入れる
家庭がある人や他人と暮らしている(料理担当の)人が、生活の中で一番悩むと言っても過言ではないのが「料理にまつわること」ではないでしょうか。
朝ご飯用のお味噌汁や卵焼きの火加減を見ながらお昼の弁当を詰めて、夜ご飯は、栄養バランスや直近のメニューと被らないか、冷蔵庫の食材を消費できるかなど、複数の観点から献立を考えて……。仕事帰りに疲れた体でスーパーを駆け回る人もいるでしょう。
とにかく料理は判断の連続。だからこそ、休日に作り置きをしたり、使い回しがしやすいレシピを複数持っておいたり、冷凍食品をうまく活用したりして、平日の負担をできるだけ軽くしましょう。
「毎日ちゃんと手作りしなければ」という理想が、自分を疲れさせていることも往々にしてあります。
◻︎メールやチャットの返信は時間を決めて対応する
多くの働く女性が見落としやすいのが、返信疲れ。
即レスは仕事ができる人の特徴、などとよく言われますが、通知が来るたびにすぐ返していると、その度に集中力が途切れ、本来30分で終わる仕事が1時間かかってしまいます。
即レスをするのは「ひとことで返答できる内容の場合」「緊急性の高い場合」などとルールを決め、それ以外は時間を決めてまとめて対応してはいかがでしょうか。
- LINEは夜にまとめて返す
- 仕事中は、仕事のチャットツール以外を通知オフにする
- 返信は24時間以内ならOK
などのように、自分なりのルールを設ける人もいます。
【3歩目】「好き」を増やすより「嫌い」を減らす

好きな仕事、好きな趣味、好きな場所、好きな人。自分が心から楽しめるものを増やしていけば、毎日はもっと充実する———そう考えること自体は間違いではありません。
けれど現実には、「好き」が足りないから毎日が苦しい人よりも、「好き」を楽しむ余裕がない人のほうが多いのではないでしょうか。それは、好きなことよりも「嫌いなこと」「苦手なこと」「なんとなく我慢していること」に囲まれているからです。
大して面白くもないのに毎日義務のように見ているSNS。通知が鳴る度に気が重くなるLINEグループ。義理で参加している飲み会。断りたいと思いながらも引き受けてしまう仕事……。
どれも一つひとつは些細なことかもしれませんが、積み重なると心と体を蝕んでいきます。人は、強いひとつのストレスよりも、「少しだけ嫌なこと」が積み重なって長期間続くほうが疲れやすいと言われています。
冒頭でもお伝えしましたが、好きなことをどんなに取り入れても疲れが取れないなら、我慢していることや耐えていることを手放していく必要があるのです。
過去1週間を振り返って「終わった後に疲れる予定」があれば、そっと離れてみましょう。スマホの中に「惰性で見ているアプリ」があれば、まずホーム画面から外しましょう。すべてを手放すことは難しくても、「本当は嫌だ、手放したい」と感じている自分を認めてあげましょう。
部屋を片付けると空間に余白が生まれるように、生活から「嫌なこと」「我慢していること」を減らしていくと、心にも余白が生まれます。そして、その余白があるからこそ、本当に好きなことを楽しむエネルギーが戻ってくるのです。
「好きなことが見つからない」と悩む前に、「今の自分を疲れさせているものは何だろう」と、ぜひ問いかけてみてくださいね。
エネルギーが漏れない、疲れにくい毎日作りを始めよう
毎日しっかり休んでいるはずなのに疲れが取れない時は、見えないところで少しずつエネルギーが漏れているのかもしれません。まずは「毎日の細かなストレスが多すぎるのかも」と視点を変えて、日々の小さな選択や判断を減らしてみてください。
そして、好きなことを無理に探すより、まずは気乗りしない予定や惰性で続けている習慣を手放してみましょう。心と時間に余白が生まれれば、自然と元気も回復してくるはずです。
続く後編では、セルフプリザベーションを活用した残りのアプローチをさらにくわしくご紹介します。
編集部・アイ
人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

