
本当に見直すべきは自分の体調?体調を後回しにしない働き方を見つけよう
Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】
「生理前だからか、今日は集中できない」
「育児や家事で疲れ切っていて、普段ならスムーズに進められる仕事もひどく重たく感じる」
それでも予定表には朝から会議が並び、締め切りは待ってくれず、周りにも迷惑はかけられない。少しくらいの不調ならとコーヒーを何杯も飲み、何とか一日を終わらせる。そんな日々が続くうちに、不調を感じること自体に慣れてしまう───。
私もよくある、と今頷いている女性は多いでしょうが、本当に見直すべきは「自分の体調」なのでしょうか。
睡眠時間や食事、季節、気温、仕事、家事や育児、人間関係、生理周期───。それらの影響を日々受けながら「いつも同じ状態でいる」のは、機械ではない私たちには不可能です。
日本では、2025年6月に決定された「女性版骨太の方針2025」において、仕事と健康課題の両立支援や、家事・育児・介護負担の偏りを見直すことなどが重点事項として掲げられました。厚生労働省も、月経・妊娠・不妊治療・更年期・がんなど、女性が直面し得る健康課題と仕事を両立するには、本人の努力だけでなく職場のサポートが必要だと示しています。
そのような社会や職場の仕組みは早急に整えられるべきです。でも、十分に整うことを待つ間に、今の環境で自分を守るためにできる工夫もあります。
そこで今回は、体調を完璧に整えていつも同じように成果を出す方法ではなく、「変化する身体」を前提にした仕事への向き合い方や予定の組み方をご紹介します。
「体調を後回しにしない働き方」の心構え
①毎日変化する自分に「同じ働き方」を求めない

たとえば排卵期や月経期の前後は、身体のあらゆる部分の痛みや眠気、集中力の低下、気分の落ち込みなども相まって、些細なことでも自分を責めがちになるもの。
普段はスラスラと書ける文章に数十分かかったり、周りの一言に大きく傷ついたり、簡単な確認作業で間違えたり。でもそれだけで、「もうすべてをやめてしまおうか」と投げやりになることもありますよね。
けれど、人のコンディションが日々変化するのは、ごく自然なこと。不安なことがあって眠りが浅かった日、気温差が大きい日、緊張する予定がある日、朝から子どもを叱ってしまった日。身体は、私たちが自覚するよりも多くの情報を受け取り、その日の状態を作ります。
このように、私たちは変わりゆく環境を変わりゆく身体を通して生きていて、それは一人ひとり異なるというのに、「同じ働き方」を求め続けるのはあまりにも酷ではないでしょうか。
ではどうしたら良いかというと、一般論や根性論などに自分を合わせるのではなく、まず自分自身の傾向を知ることです。
- こういう考え方をすると不安になりやすく、不安を感じると眠りが浅くなり、翌日に集中力が落ちる
- 低気圧の日は簡単な確認作業でも進まない
- 会議が3本続くと、その後の判断力が極端に落ちる
- 睡眠6時間を切ると、感情の波が大きくなりやすい
自分を観察し傾向や特徴を掴めれば、仕事を自分に合わせて調整しやすくなります。体調の変化に対応できる選択肢を増やすことが、自分を守りながら働き続けるための第一歩なのです。
②仕事は「時間」だけでなく「エネルギー」でも考える

限られた時間を有効に使うため、「朝は企画、午後イチは作業」のように、手帳やカレンダー上でパズルのように予定を組む人は多いでしょう。
ただし、時間だけを基準に組むと重要なものが抜け落ちます。それは、その仕事をするために必要な「エネルギー」です。
たとえば、企画をゼロから考える1時間と、すでにある資料の誤字を確認する1時間では、同じ60分でも使う力が違います。生理前の体調が悪い時に感じる負担と、そうでない時に感じる負担は、雲泥の差と言っても過言ではないでしょう。
スケジュール帳の中ではすべての1時間が同じ大きさですが、私たちはいつも絶好調で仕事を進められるわけではなく、よって同じ1時間ではないのです。
つまり、自分の身体を大切にしながら仕事で結果を出すには、「その業務にどのくらいのエネルギーを使うか」「その時間にどのくらいエネルギーが残っているか」といった視点も加えて予定を組む必要があります。
さて次の章からは、「体調を後回しにしない働き方」を見つける方法を2ステップに分けてご紹介します。
【ステップ1】まずは、体調+成果ログをつける

自分の体調の傾向を知るために、生理周期や睡眠、気分などをアプリで記録している人もいるでしょう。記録は、不調が起きやすい時期や変化に気づくための大切な手がかりになります。
ただ、仕事の組み方に生かすなら、体調と併せて「その日、仕事がどのように進んだか」「何に疲れて、上手くいかなかったか」も記録するのがオススメ。
体調がどのように仕事に影響しているのか、あるいは仕事がどのように体調に影響するか、という傾向を掴めるからです。
記録する項目は最初から増やしすぎず、1日3行程度で残すだけでもOK。睡眠時間・気分・身体の状態・会議の本数・進んだ仕事・負担を感じた仕事・その他の気づき、くらいから始めると続けやすいでしょう。
- 睡眠7時間。午前中は会議なし。企画書の骨子が短時間で完成
- 生理前で眠気あり。午後にオンライン会議が3本続き、その後の確認作業でミスが増えた
- 仕事量は多くなかったけど、自分のペースで進められない時間が長く、心が消耗した
- 昼休みに15分歩いた。夕方も比較的集中できた
これを少なくとも数週間記録し続けると、「午前中に会議がない日は考える仕事が進みやすい」「人と長く話した翌日は一人で進める仕事が心地よい」「自分のペースで進められないとストレスが溜まる」といった、自分なりの傾向が見えてきます。
その傾向にこそ、あなたが成果を出しやすい/成果を出しにくい条件が表れているのです。
自分が成果を出せる/出しにくくなる条件が分かれば、できる範囲で条件を整えて、心や身体を大切にしながら成果を出せるようになるでしょう。
【ステップ2】エネルギーマップで、業務を負荷ごとに分ける

自分の傾向が見えてきたら、次に作りたいのが仕事のエネルギーマップ。これは、自分が担当している仕事を、所要時間や締め切りだけでなく、「どのような力を使うか」「終わったあとにどのくらい疲れるか」という視点で整理するものです。
同じ30分の仕事でも、感じる負担は人それぞれ。メールを10件返す方が疲れる人もいれば、初対面の相手と話す方が疲れる人もいます。数字の確認を負担に感じる人もいれば、一人で黙々と進める作業に息苦しさを感じる人もいるでしょう。
大切なのは、「会議は疲れるもの」「単純作業はラクなもの」と一般化せず、自分の場合はどうなのかを考えること。それを把握すれば、自分の体調に合わせて効率よく働きやすくなります。
普段の業務を4つに分類する
まずは普段の業務をできるだけ細かく書き出し、次の4つに分類します。書き出す際には「資料作成」のように大きくまとめず、構成を考える/数字を確認する/文章を整える/デザインを確認するのように分けてみてください。
- 新しい考えや判断が必要な、創造的な仕事
- 人の反応を読みながら進める、対人エネルギーを使う仕事
- 手順が比較的決まっている、整える仕事・単調な仕事
- 取り組むことで気持ちが落ち着いたり、元気が戻ったりする、回復する仕事
次の章からは、4つの分類の具体的な説明や、負担を感じた際の取り組み方などをご紹介します。最後の章には、自分だけの「エネルギーマップ」を完成させるためのワークもあるので、併せてご覧ください。
【創造的な仕事】進みやすい時間帯に予定を入れる

企画の骨子を考える、新しい提案をつくる、難しい課題の解決策を探す、重要な文章を書く。こうした創造的な仕事は、カレンダーに1時間空いていれば必ず出てくるものでもありません。実際の作業時間以上の余白が必要なのです。
だからこそ、成果ログを踏まえて、「考える仕事が進みやすい時間帯」に先に予定として確保しましょう。ここでのポイントは、一般的によく聞く「脳のゴールデンタイム」などに無理に合わせないことです。
朝の方が集中できるなら午前中の最初の1時間を、午後に調子が上がるなら昼食を少しズラして時間を作りましょう。
また体調が悪い時や、この業務に負担を感じやすい人は、「企画を完成させる」ではなく、資料を集める/見出しだけ作る/盛り込みたい情報をまとめておくのように、工程を分けて取り組んでみてください。
【対人エネルギーを使う仕事】求められる役割を考える
会議、商談、プレゼン、面談、電話、相談対応。人と関わる仕事には、話す力だけでなく、相手の表情や声の調子を読み取る力、場の空気を整える力、適切な言葉を選ぶ力が必要です。
これらは、コミュニケーションが得意な人であっても、違った負担を感じるもの。よく知る相手との和やかな会議と、社長も含めた緊張感のある会議では疲れ度合いが変わりますし、話を聞く立場なら平気でも自分が結論を出す役割は疲れる、という人もいます。
そのため、対人エネルギーを使う仕事を「1時間」とだけ予定表に記すのではなく、「自分がどんな役割を求められるのか」「何に負担を感じるか」まで考えてみましょう。
聞くだけの共有会議なのか、発言が必要な会議なのか、判断を求められる会議なのか、誰かと交渉する会議なのか。それらの何に負担を感じるか、どうしたら負担を軽減できるか。
これらを事前に明確にできれば、余裕を持って準備し、対人エネルギーを使う仕事に臨むことができます。また、負荷の高い会議が続く時には、「前後に5分でも一息つける時間を取る」「直後に重要な判断をしない」などの工夫をしましょう。
そして、対人での仕事が多い日は、緊急度の低いメールやチャットの返信までリアルタイムで完璧に行わないこともポイント。マルチタスクをやめて、目の前にある会議一つひとつに集中するだけでも、負担は軽減できます。
【整える・単調な仕事】低調でも「頑張れなかった」と落ち込まないために

資料の表記を揃える、ファイルを整理する、経費を申請する、議事録を整える、メールの下書きを作る。進め方が比較的決まっているこうした仕事は、頭がうまく働かない日にピッタリ。
ただし、体調が悪くなってから仕事を探すとそれ自体でエネルギーを消耗してしまうため、日頃から「低調な日でも進めやすい仕事」を2〜3個ほどリストアップしておきましょう。
1ヶ月/1週間のタスクを洗い出す際に、そのカテゴリを作って書き出しておいても良いですね。そうすれば、予定していた企画が進まない日など体調が悪い日以外にも、効率よく仕事を進められます。
また、繁忙期がある方は、体調が良くないけれど仕事を少し進めたい時のために「前倒しできる仕事」をリストアップしておくのも良いでしょう。すでにやると分かっている仕事を早めに進めておけば、未来の自分も楽になるはずです。
このように、低調な日にも進められる仕事の用意があれば、自分を過度に追い込んだり、「何も頑張れなかった」と卑下したりせずに済みます。「体調は悪かったけどこの仕事は頑張ったぞ!」と思えると、心の負担も軽減できますよね。
【回復する仕事】意識的に取り入れ、自分を伸ばす
仕事=エネルギーを消費するもの、として語られがちですが、すべての仕事が同じようにエネルギーを消耗させるわけではありません。
もちろん責任や疲労も伴うけれども、それすらも気持ち良く、「終わったあとにむしろ回復しているように感じられる仕事」もあるのです。
好きなテーマについて調べていると時間を忘れる。信頼できる人との打ち合わせ後は気持ちが明るくなる。1から企画したり、イメージ通りにデザインを作り上げられていると、この時間がいつまでも続けば良いのにと思う。
このように、回復に繋がる仕事は一人ひとり違います。そしてその仕事は、自分自身にとって伸ばすべき部分でもあります。結局は「夢中」に努力は勝てないからです。
忙しい時ほど回復に繋がる仕事は後回しになりやすいので、一日の終わりに15分だけ作業するなど、回復ポイントを意識的に作りましょう。
また、何をしていると回復するかがまだ見えていない方は、「普段の業務を4つに分類する」の章に戻り、仕事別に「気持ちがどう変化するか」も記録してみてくださいね。
自分だけの「エネルギーマップ」を完成させよう

4つに分類したら、それぞれの仕事に「消耗度(負担を感じるか)」「必要な集中力」「体調が落ちた日にもできるか」などの情報を加えていきます。
数値は客観的に正確である必要はなく、自分の感覚で十分です。同じ仕事でも相手や状況で負担が変わるなら、「通常は2、急ぎの依頼は4」のように幅を持たせても構いません。
また、「得意な仕事だから消耗しない」と決めつけないことも重要です。得意だからこそ依頼が集まり、気づかないうちに疲れてしまうこともありますし、一方で苦手な仕事でも、手順が決まっていて自分のペースで進められるなら心身への負担は小さい場合もあります。
さて、マップが完成したら今週の予定と見比べて、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 余白を必要とする創造的な仕事と負荷の高い会議が同じ日に集中していないか
- 対人業務が何日も連続していないか
- 低調な日に切り替えられる仕事が用意されているか
- 回復に繋がる仕事が後回しになっていないか
消耗が激しそうでも予定を組み直すことが難しければ、タスクの切れ目に10分時間を作る/次の日はライトな仕事から手をつける、など細かい部分を調整するだけでも、身体への負担は軽減できるでしょう。
担当業務や生活環境、身体の状態が変われば、各仕事の負担の感じ方も変わっていきます。月に一度ほど見直しながら、その時々の自分に合うエネルギーマップを更新してみてくださいね。
体調を後回しにせず、仕事も諦めない働き方を見つけよう

集中できて気持ちも前向きで、予定通りに仕事を終えられる日。そんな日が毎日続けばいいのにと、きっと誰もが思うでしょうが、なかなかそうもいきません。でもそれが「自然」なのです。
必要以上に自分を責めず、変わりゆく体調を受け止めて、今日できることを選び取っていく。言うは易し行うは難しですが、自分の体調に合わせた働き方を選べるようになれば、無理を重ねて身体を壊すことも避けられるはずです。
仕事のエネルギーマップを作ることで、「仕事の組み方が自分を追い詰めていたんだ」「別の組み方をすれば、こんなにも疲れなかったんだ」と気づく人も、きっといます。
体調を後回しにせず、仕事も諦めない。この機会に、今の自分に合った心地よい働き方を見つけてみませんか。
編集部・アイ
人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

