“全部を頑張れない”人へ。「頑張らないものを決める力」を養おう

Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】

もっと頑張らなきゃいけないのに、なぜか前ほど頑張れない。キャリアアップしたいし、家事もしっかりやりたい。美容や健康にも気を配りたいし、将来のために勉強や貯金もしておきたい。友人や家族との関係だって大切にしたい。

やりたいことも、やったほうがいいこともたくさんあるのに、時間も体力も足りない——。そんな感覚を抱えているあなたに必要なのは、「もっと頑張れる自分」になることではないのかもしれません。

大人になると、「頑張ろうと思えば頑張れること」が増えます。だからこそ大切になるのが、すべてに同じだけ力を注ぐのではなく、自分にとって大切なところへ努力を配分することです。

これからは、頑張ることを増やすのではなく、「何をどこまで頑張るか」「何を頑張らないか」を自分で決めてみませんか。

努力しても足りない。それは、自分が本当に頑張りたいことか

頑張っているのに満たされないのは努力が足りない、という幻想

1日を振り返ってみると、決して何もしていないわけではありません。朝起きて身支度をし、仕事をして、連絡を返し、買い物をして、食事を用意する。疲れていてもお風呂に入り、翌日の準備をする。

その合間には、健康のために運動したほうがいい、美容にも気をつけたい、勉強もしなければ、部屋も片づけたい……と、いくつもの「やったほうがいいこと」が頭をよぎります。

それなのに夜になると、「今日も大したことができなかった」と感じてしまう。ここには少しズレがありますよね。

やったほうがいいことを今やるかどうかの判断も含め、事実としてたくさんの作業をこなしているのに、自分では「まだ足りない」と評価してしまっているのです。

SNSの情報を組み合わせて「自分の基準」を作っている

その理由のひとつは、私たちの生活の中に「理想の基準」が増えすぎているからかもしれません。

SNSを開けば、仕事で成果を出している人、綺麗な部屋で暮らす人、料理を楽しむ人、運動を続ける人、資格の勉強をする人、週末を充実させている人が次々と目に入ります。

一人ひとりを見れば別々の人なのに、それらを無意識に組み合わせて、「仕事もできて、健康的で、部屋も綺麗で、趣味もあって、人間関係も充実している人」を自分の基準にしていないでしょうか。

でも、すべてを同時に高い水準で維持するには、当然ながら大きなエネルギーが必要です。時間も体力も集中力も有限なのに、「全部ちゃんとする」を目指せば、疲れ切って何もしたくなくなるのも当然です。

そんなあなたに今必要なのは、「どうすればもっと頑張れるか」を考えることではなく、「私は何を頑張りたいのか」を決め直すことなのかもしれません。

大人の努力は、「量」より「配分」で考えよう

学生時代までは、努力の方向が比較的分かりやすかったでしょう。試験があれば勉強する、部活動なら練習する、受験なら志望校を目指す。目標がある程度決まっていて、「頑張るほど前へ進む」という感覚を持ちやすかったはずです。

ところが社会人になると状況は変わります。仕事だけでも、目の前の業務、スキルアップ、キャリア、人間関係などに分けられ、生活は家事、健康、美容、お金、恋愛、家族、友人、趣味、将来設計……などのように、いくつものテーマが同時に存在します。

そんな大人が念頭に置いておきたいのは、すべての分野で100点を取る必要はないということ。

たとえば今は仕事を頑張りたいのなら、平日の料理は簡単でもOK。体調を整えることが最優先なら、勉強時間を減らしてOK。反対に仕事が落ち着いていて体調が良い時期なら、趣味や友人との時間に積極的にエネルギーを使ってみてもオススメですよ。

これは手を抜いているのではなく、限られたエネルギーの使い道を選んでいるのです。

私たちはお金については「何にいくら使うか」を比較的よく考えますが、時間や体力については、なぜか無限に使えるもののように扱いがち。本当は時間も集中力も有限だからこそ、「今はAに多く使い、Bはセーブする」と予算を組むように考える必要があります。

「100点・60点・0点」で優先順位をつけよう

優先順位をつけて頑張ることを減らそうとしても、どのように順位をつけるべきか、何を減らせばいいのか分からないこともありますよね。そんな人は「100点・60点・0点」の3つに分けて考えてみましょう。

まず「100点」は、今の自分がしっかり力を注ぎたいこと。これは完璧を目指すものではなく、優先するものを意味します。仕事で新しい役割に挑戦しているなら仕事、疲れているなら睡眠など、その時期によって対象は変わります。

次に「60点」は、問題なく回れば十分なこと。毎日手料理を作らなくても栄養がある程度取れていればOK、部屋がホテルのように整っていなくても生活できるならOK、のように、困っていないなら合格とします。

そして意外と重要なのが「0点」の今は頑張らないこと、場合によっては完全にやめることです。たとえば、なんとなく続けているSNS、惰性で参加している飲み会、興味が薄れた勉強、義務感だけで続けている習慣なども含まれます。

「いつかやらなきゃ」「いつか辞めなきゃ」と頭の片隅に置いているだけでも、人はエネルギーを奪われるもの。抱えているものをすべて60点にするだけでも楽になりますが、今不要だと感じているものは「今はやらない」と決めてしまっても良いかもしれません。

「やったほうがいい」と「私がやりたい」を分けよう

何を頑張り、何を頑張らないかを整理する時にもうひとつ確認したいのが、その努力を「誰が望んでいるのか」です。

  • 資格を取ったほうがいい
  • 英語を勉強したほうがいい
  • もっと運動したほうがいい
  • 料理くらいできたほうがいい
  • 休日は外に出たほうがいい

これらは、たしかに役に立つことも多いでしょう。世の中には「やったほうがいいこと」が無限にあります。でも「やったほうがいい(役に立つ)」と「自分の人生に必要」は同じではないのです。

英語を勉強すれば仕事の選択肢が広がるかもしれないけれど、今の自分が望むキャリアに英語が必要でなければ優先順位はそこまで高くない。料理ができれば食費や健康面でメリットがあるけれど、料理が大きな負担になるなら別の方法で食生活を整えれば良い。

自分以外の誰かが望む「やったほうがいい」をすべて採用していたら、それだけで一生が終わってしまいます。自分が目指す方向と繋がっていない努力は、ただ虚しくさせるだけかもしれません。

ですから今後、「〜したほうがいい」と思ったら、自分に問いかけてみてください。それをすると、私はどんな生活に近づくのだろう?と。

答えが明確なら、その努力には意味があります。一方で「みんなやっているから」「できたほうが立派だから」「なんとなく不安だから」しか理由が見つからないなら、今すぐ頑張らなくてもいいかもしれません。

「できること」と「やるべきこと」は別物

そのほかに、頑張り屋さんほど陥りやすいのが「できるからやる」という状態。

頼まれた仕事を引き受けられる。相談されたら話を聞ける。家事も自分でやったほうが早い。予定を詰めてもなんとかこなせる。少し無理をすれば、もうひとつくらい頑張れる。確かに「できる」かもしれません。

でもそれらは、本当に自分がエネルギーを使いたいこと、自分がやるべきことでしょうか?
あなたばかりが我慢を強いられてはいないでしょうか?
本来「やるべきこと」は別にあるのではないでしょうか?

たとえば職場で、誰かがやらなければならない細かな仕事をいつも引き受けているなら、「私ができるから」だけで続けていないかを、立ち止まって考えてみましょう。

断ったり任せたりすると一時的に罪悪感が生まれたり、「冷たいと思われないかな」「怠けているように見えないかな」と不安になったりするかもしれません。

しかし本来、自分の時間を守りながら、誰かの期待をすべて満たすことはできないのです。何かにYESと言うことは、その時間にできた別の何かへNOと言うこと。「できること」を引き受ける前に「本当に自分の時間を使いたいか」を考える習慣をつけてみてくださいね。

頑張らないことを決めると、本当に頑張りたいことが見えてくる

努力を減らしたり配分を変えたりすることに抵抗のある人は、「頑張らなくなったら、自分はダメになってしまう」と不安を感じているのかもしれません。でも実際には逆で、頑張る場所を絞ったほうが、必要なところでは力を出しやすくなります。

たとえば、仕事で大切なプレゼンがある日に、朝から完璧な朝食を作り、洗濯をして、部屋を片づけ、SNSの連絡にもすべて返信してから出勤する必要はありません。その日の目的がプレゼンなら、それ以外は最低限でいいのです。

ほかにも、転職したばかりの3ヶ月は仕事に慣れることを優先する。繁忙期は家事を簡略化する。疲れが強い時期は、何より睡眠を優先する。

こうして書き出してみると、「頑張らない」は「努力しない」ではなく、「大切なものを守るために、別の場所で力を抜くこと」であると分かります。配分を変えずにすべてに力を注ごうとすれば、最終的にはすべてが中途半端になってしまうでしょう。

ですから、新しいことを始めるときには「そのために何を減らそう?」もセットで考えてみてくださいね。

15分間、今週の棚卸しをしてみよう

ここまでを読んで「自分も頑張りすぎているかも」と思った人は、15分ほど時間を作り、今自分が頑張っていること・頑張らなければと思っていることを思いつくままに書き出してみましょう。

仕事、家事、運動、美容、勉強、人間関係、貯金、SNS、趣味など、小さなことまで含めて構いません。

そして、それぞれを力を注ぎたい順に「100点・60点・0点」に振り分けてみます。ポイントは、100点を増やしすぎないこと。今週力を入れるものは1〜2個程度で十分。それ以外は60点に落とすか、いったん0点にします。

さらに100点にしたものについては、具体的に何をしたら今週は合格なのかまで決めてみましょう。たとえば「仕事を頑張る」ではなく「金曜日までに企画書を完成させる」、「美容を頑張る」ではなく「毎日15分お風呂に浸かる」など。

そして60点にしたものには、最低限これだけできればOKというラインを設定します。料理なら「忙しい日は買ってきてもOK」、掃除なら「床に物を置かない程度」、運動なら「駅では階段を使う」でもいいでしょう。

最後に、0点にしたものには「今週はやらなくていい」と自分自身に許可を出します。

この棚卸しを通して、自分が何をどこまで頑張りたいか・そのために何を手放すかを明確にできると、「自分は全然頑張れていない」と無力感に陥らず、大切にしたいものを大切にできるようになるはずです。

頑張りたいことを頑張るために、「頑張らないこと」を定めよう

頑張っているのに満たされないと感じる時は、努力が足りないのではなく、すべてを完璧にこなそうとしすぎているのかもしれません。

時間や体力は有限。だからこそ「頑張らない」ものを定めて、エネルギーを適切に配分する必要があります。

世の中の「やったほうがいいこと」に振り回されず、自分の優先順位に従って、今週頑張らないことをまずはひとつ定めてみてくださいね。

編集部・アイ

人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

関連記事