反発ではなく吸収。それが充実した生き方と成功への道【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】

両親は世界的な名女優フェルナンダ・モンテネグロと、俳優でプロデューサーのフェルナンド・トーレス。

ブラジル映画界・演劇界の重鎮の子として生まれたフェルナンダ・トーレス。

家族の存在や近しい人からのプレッシャーに負けず、「反発」するのではなく「吸収」することで、充実した生き方と成功を手繰り寄せた彼女の功績に学びたい。

映画「アイム・スティル・ヒア」
フェルナンダ・トーレス

舞台は1970年代の軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員のルーベンス(セルトン・メロ)と妻エウニセ(フェルナンダ・トーレス)は、5人の子供たちと共にリオデジャネイロで不自由なく幸せに暮らしていました。

しかし、スイス大使誘拐事件がきっかけで軍の抑圧は勢いを増し、ある日ルーベンスは軍に連行されてしまいます。突然夫を奪われたエウニセは必死にその行方を探るのですが、やがて彼女自身も軍に拘束され過酷な尋問を受けるのです。

その後、彼女は釈放されたものの、夫の消息は一切知らされませんでした。それまでの安息の日々と最愛の夫を奪われたエウニセと子供たちの運命は…。

ブラジルの名匠ウォルター・サレス監督は、これまでも『セントラル・ステーション』や『モーターサイクル・ダイアリーズ』など、傑作を世に放ってきました。

彼の緻密な人間描写と社会問題への痛烈なカウンターは気骨があり、多くの映画監督が影響を受けてきたのです。

本作を観て「神は細部に宿る」という言葉が頭をよぎりました。

言葉の意味は、素晴らしい芸術作品や良い仕事は細かい部分を丁寧に仕上げていて、そのディテールこそが作品の本質ということなのですが、まさにウォルター・サレス監督の細密な演出の積み重ねが作品に説得力を与えています。

例えば、軍からの事情聴取を受けるために、エウニセと娘のエリアナがパトカーに乗せられて移動するシーン。

夫の所在を探りながらも家族を守るエウニセは、社会性もあり5人の子供を育てている強い女性なのですが、パトカーの揺れやサイレンの音、そして車内のカメラワークや表情の寄りで、エウニセの不安を120%演出しているのです。

ヴェネチア国際映画祭では脚本賞、ゴールデングローブ賞では主演女優賞を受賞し、アカデミー賞では3部門にノミネートされ、最優秀国際長編賞を受賞した鎮魂映画『アイム・スティル・ヒア』を是非劇場で体験してみてください。

そして、エウニセを演じた女優フェルナンダ・トーレスは、1965年にブラジルのリオデジャネイロで生まれました。

映画通の方はご存知でしょうが、彼女の母親は世界的な名女優フェルナンダ・モンテネグロであり、父親も俳優であり、プロデューサーのフェルナンド・トーレス。両親ともにブラジル映画界・演劇界の重鎮です。

トーレスは両親からの強い影響を受けて13歳で初舞台を踏み、14歳の時に『イノセンス』で映画デビューを果たします。

そして『ラブ・ミー・フォーエバー・オア・ネバー』でカンヌ国際映画祭の女優賞を獲得。その後『クアトロ・ディアス』などの映画に出演しつつ、テレビドラマや舞台にも積極的に出演。

そして役者活動と並行して小説家・脚本家・プロデューサーとしても活躍しています。

トーレスは女優として活動を始めた頃から、否が応でも母親であるフェルナンダ・モンテネグロの存在を無視することができませんでした。インタビューを受ければ母親のことを聞かれ辟易としたこともあったといいます。

映画『セントラル・ステーション』は、母親であるモンテネグロの代表作であり、ブラジル人俳優として初めてゴールデングローブ賞にノミネートされたのですが(監督はウォルター・サレスであり実はトーレスも出演している)四半世紀の時を経て、母親が成し遂げられなかったゴールデングローブ賞を娘が受賞したのです。

「この賞を母に捧げたいと思います。母は25年前にここにいました。これは芸術が生涯続くことへの証拠です」トーレスはゴールデングローブ賞の壇場でこうスピーチしました。

家族の存在や近しい人からのプレッシャーに負けそうになることもありますが「反発」するのではなく「吸収」することが、充実した生き方と成功を手繰り寄せる秘訣なのかもしれません。

アイム・スティル・ヒア

監督/ウォルター・サレス
脚本/ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ
出演/フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ 他

公開/8月8日(金)新宿武蔵野館 他

©2024 VIDEOFILMES / RT FEATURES / GLOBOPLAY / CONSPIRAÇÃO / MACT PRODUCTIONS / ARTE FRANCE CINÉMA

Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー)

Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。

関連記事