
もう過去の自分には戻らない。新年度から“新しいわたし”になる方法
Poco’ce編集部が月曜8時にお届けする連載、【さあ、今週もわたしのために。】
来月から新年度を迎えるにあたり、今いる環境からの卒業を迫られたり、新しい地に足を踏み入れようとしていたり、「新しい自分になったつもりで過ごしたい」と考えている方も多いことでしょう。
しかしあっという間に、元の自分に戻ってしまった───。実は、過去にそんな経験のある方もいるのではないでしょうか。これは、人間の脳に「ホメオスタシス(恒常性)」という働きがあるから起こることです。
そこで今回はホメオスタシスの働きに左右されず、つまり過去の自分に戻らずに、“新しいわたし”になれる方法をご紹介します。
脳は変化を嫌う。ホメオスタシスとは?

ホメオスタシス(恒常性)とは、外の世界の変化にかかわらず、体内状態を一定の範囲内に保とうとする働きのこと。たとえば近年続いている夏の酷暑の中でも人間が健康を保つことができているのは、人間の体内にバランスを調節する働きがあるからです。
しかし、ホメオスタシスという脳の強い働きによって、私たちの人生における変化や挑戦が足止めされてしまうこともあります。急激に自分を変えようとすると、脳がそれを「生存への脅威」とみなし、元の状態へと戻そうとするのです。
とはいえ、ホメオスタシスは私たちの敵ではなく、むしろ人間が安全かつ健康に生きていく上で不可欠なもの。まずは脳の仕組みを正しく理解し、その上でどのように自分を変えていくべきかを考えていきましょう。
【Step1】まずは「Being」を具体的な言葉にしてみよう

変わりたいと願う時、多くの人が「何をすべきか(Doing)」から考え始めてしまいます。
しかし本当に私らしい生き方を望む時・より本質的な変化を起こしたい時には、「どのような自分でありたいか(Being)」の定義を先に行いましょう。
その理想を明確にするために、まずはノートを広げて、
- 過去、自分がもっともイキイキとしていた瞬間はいつか
- 「何も不安がない状態ならずっと続けていたいこと」は何か
- 1年後、どんな表情で過ごしている自分が理想か
- 理想の自分はどんな言葉を使い、どんなものに囲まれ、どんな習慣を持っているか
- 譲れない価値観は何か
などを自由に描き出してみてください。
理想や「自分はこういう人間で当たり前」という姿が明確になると、変化に伴う脳の抵抗や不快感が和らぐどころか、逆に「それが叶っていない今の自分自身や環境」への違和感が大きくなります。この違和感が行動を後押ししてくれるのです。
また、「どんな習慣を持っている人間でありたいか」を書き出す際にも、習慣だけでなく“ありたい姿”を明確にしておきましょう。たとえば「毎日30分勉強する習慣を持っている」なら、「私は常に新しいことを学ぶ、好奇心旺盛な人間である」などのように。
【Step2】今までの自分には戻れない「環境」を設計する

理想の自分自身や身につけているであろう習慣、生活を明確にした後は、そんな自分へと変化していくための「環境」を設計していきます。理想を明確に描いても、今までと同じ環境に囲まれていると、ホメオスタシスが働き元通りになってしまうからです。
新年度を目前に控える今だからこそ(もちろん、そうではないタイミングであっても)、これからの自分に不要なものを遠ざけ、必要なものをアップデートしていきましょう。
たとえば……
- 時間やエネルギーを奪う、小さなストレスの元を買い換える(毎日触れるものを優先的に)
- 反応が鈍いマウス、使いにくい調理器具、着るたびに少し気分が下がる服など
- 睡眠や食事など、心身の健康を支えるモノをアップグレードする
- 良質な睡眠をとれる枕、寝心地の良いマットレス、リカバリーウェア、時短できる自動調理器など
- 意志力を使わなくても習慣化できるよう、生活の動線を整える(習慣化の環境設計については、次の章でくわしくお伝えします!)
- 習慣化したいことのきっかけが目に入るようにし、実行のハードルを徹底的に下げるなど
【Step3】意志力なんて要らない!新しい自分を自動で作る、2つの仕組み

Step②では「今までの自分には戻れない“環境”の設計」についてお伝えしました。最後にご紹介した、意志力を使わない習慣化についてくわしく見ていきましょう!
やる気がある時はできるけど、疲れているとできない。忙しない日々の中で意志力を頻繁に使っている現代人にとって、それはむしろ当たり前と言えます。スマホから流れる膨大な情報の取捨選択で、脳は常に決断を迫られており、何かを習慣化したくてもその余力が残っていないのです。
ならば、意志力に頼る必要のない“仕組み”を作ればいいだけのこと。「やろうかな、今日はやめようかな」と悩んだり決めたりせずとも自動的に動ける仕組みを作れば、力を温存しながらも、望み通りに習慣化できるはずです。
⚫︎「If-Then計画(もし〜なら〜する)」で、迷わず行動できるようになる
変化や挑戦への脳の負担を減らす最も有効なテクニックの一つが、If-Then計画。これは、「もし(If)特定の状況が起きたら、その時は(Then)この行動をする」と、あらかじめ行動のきっかけを指定しておく方法です。
その際、すでに習慣化されているものの後ろに付け足すことをオススメします。
If-Then計画の例
- 朝コーヒーを淹れたら、1つだけ英語のフレーズを覚える
- 歯を磨きながら、スクワットを10回する
- 通勤電車に乗ったら、まず本を1ページ開く
- ランチを食べ終わったら、すぐに10分間のマインドフルネスを行う
- 帰宅してバッグを置いたら、すぐにスマホを充電器にセットして離れる
このように「いつ・どこで・何を・どのルーティンの後にするか」を明確に決めておくと、忘れたり後回しにしたり強い抵抗を感じることなく、行動を始められます。
“新しいわたし”になるために新年度から始めたい習慣があるなら、「いつ、どのルーティンの後ろにくっつけるか」を、まずは紙に書き出してみましょう。
⚫︎脳が気づかないくらい「小さな一歩」から始める
「特定の状況が起きたら、その時はこの行動をする」と決めても、最初のうちは面倒に感じたり、抵抗を抱いたりするかもしれません。
ならば①とセットで、脳が気づかないくらい「小さな一歩」から始めることを目標にしてみてください。
たとえば、朝コーヒーを淹れた後に1つだけ英語のフレーズを覚えたいなら、目標は「1つ英語のフレーズを覚える」ではなく「単語帳を開く」にしてみる。ランニングを習慣にしたいなら、目標は「15分走る」ではなく「スニーカーを履く」だけに設定する。
新しいことを始める際に脳が最も抵抗を感じるのは、それを始める瞬間。ですからその摩擦をなくすために、小さな一歩から始めてみるのです。
面白いことに、一度始めると脳はその行動を続けようとする慣性の力を発揮するので、単語帳を開くだけでなくフレーズを覚えようとし、スニーカーを履くだけでなく外に出ようとするでしょう。
【Step4】記録+捉え方で、目の前のプロセスを楽しむ

⚫︎「今日もできた」を記録する
人間の脳には、快感(報酬)を感じる行動を繰り返そうとする性質があります。毎日の行動やその変化を記録することで報酬系の働きをうまく活用すれば、脳が嫌う「変化」も、より楽しみながら続けていけるはず。
最新のウェアラブルデバイスや専用アプリを使い、睡眠、歩数、瞑想時間などを自動的に記録するもよし。お気に入りのノートや手帳に「今日できたこと」に合わせて可愛いシールを貼っていく、アナログな方法でもよし。
過去の自分と比べた時の変化が目に見えると、「自分にもできるんだ」「少しずつだけど進めているんだ」と思えるようになり、継続や変化・挑戦へのハードルも下がっていきますよ。
⚫︎変化や成果がすぐに出なくても焦らない捉え方
心機一転変わりたい。もう過去の自分には戻りたくない。そう思って進み続けていても、「結局は何も変わっていない」「過去の自分のままだ」「目に見える成果が出ない」と感じる停滞期が必ず訪れます。
そう感じたあなたに、角氷の比喩をご紹介しましょう。
マイナス10度の部屋に、角氷が置いてあったとします。この氷は、マイナス9度、8度、7度……0度まで気温を上げても溶けません。でも、0度から1度になった瞬間に溶け始めるのです。
成長や進歩も実は直線的ではなく曲線的なもので、その変化や成果は突然現れるもの。変化や成果が見えない停滞期は「まだそれが表に現れていないだけ」とゆったり捉えて、疲れた時には休みながら、続けていってみてください。
プロセスを楽しみながら、小さな一歩を重ねて“新しいわたし”へと変わっていこう

“新しいわたし”というものは、きっと、一直線の坂道を登れば辿り着けるものではないでしょう。しかし、脳の仕組みを正しく理解し、小さく確実な一歩を積み重ね、そのプロセスを心から楽しんでいれば、必ずどこかの時点で氷が溶け始めるはず。
新年度・新生活という、目にする環境や関わる人がわかりやすく変わりやすいタイミングをうまく活用しながら、今度こそ“ありたい自分”へと、“新しいわたし”へと、変わっていきましょう。
編集部・アイ
人間への好奇心と実験欲にあふれるライター。人生の“ままならなさ”は生きる醍醐味。今まさに読んでくださっているあなたと「ままならないね〜」と分かち合い、「まあでも頑張るか!」と肩を組めるような言葉を紡ぎたい、と常々思っている。

