
映画『火喰鳥を、喰う』。人間は発する言葉と本心が一致しているわけではない【山下美月】
四半世紀以上の歴史を持つ「横溝正史ミステリ大賞」と1994年創設の「日本ホラー小説大賞」の統合により誕生した新人文学賞「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」で、令和初の大賞受賞作となった『火喰鳥を、喰う』。
原作発売の2020年には既に映画化の企画が進んでいた同作が、遂に今秋、スクリーンにお目見え。心に闇を抱えたヒロイン・夕里子を演じた山下美月さんに、撮影時のエピソードや本作への想いを伺いました。
人間は発する言葉と本心が全部一致しているわけではない
─── 撮影に入られる前に、原作をお読みになったそうですね。
読みました。第一印象は、“どうやって実写化するのだろう?”でした。
まず、火喰鳥をどう描写するのかが気になりましたし、言葉で表しきれない薄気味悪さみたいなものが漂う作品なので、どうやってその雰囲気を演出するのだろうかということも考えました。
“THE・脅かすぞ”という感じとは違って、馴染みのない土地に行くと夕方くらいになんとなく不安な気持ちになって、なぜだかわからないけど背筋がぞっとするような…、あの感覚に似た怖さがある作品だと思います。

─── ヒロイン・夕里子としてその世界に入っていくにあたって、どんなことを意識しましたか?
私が演じた夕里子は、水上恒司さんが演じた夕里子の夫・雄司、宮舘涼太さんが演じた北斗との間で揺れ動く部分があるキャラクターだったので、事前に作りこまず、2人のアクションに反応する受け身のお芝居を意識しました。
2人の言動に対して生まれてくる不安や迷い、疑心暗鬼の感情を大事にしたかったので、“ここでこう動こう”といったことも決めずに現場に入りました。
─── 夕里子はどんなキャラクターだと解釈しましたか?
演じるにあたっては、本当のところ、雄司のこと、北斗のことをどう思っているのかわからないミステリアスな一面を表現したかったので、夕里子のなかに信念みたいなものは持たせませんでした。
同時に、“夕里子の本心は実際の言動とは逆なのでは?”という可能性を忘れないよう心がけました。
たとえば、夫である雄司のことを愛していると思いたいけれど、“本当に北斗に対して1ミリも気持ちがなかったのかな? 結婚して普通の幸せは手にできても、自分の力を隠しながら生きていかないといけないのに、その生き方は夕里子にとって本当に幸せなのかな?”とか、夕里子自身が発した言葉と心の内に違いがあるのではないかなということをすごく考えました。
そもそも、人間って言葉にすることと心で思っていることが全部一致するわけではないですし、夕里子も、家庭的で仕事もできる、強い女性を演じているのかもしれません。

─── 水上さん、宮舘さんの印象を教えてください。
水上さんはずっと相対性理論の話をされていたので、なんだかすごく難しいことを考えていらっしゃるのだなと思って聴いていました。
宮舘さんは、ご本人の引力が強くて絵力がある方で、水上さんとはお芝居の仕方が全然違ったので、私は夕里子として、2人のちょうど中間にいられる人間になりたいなと思って撮影に挑みました。
─── 完成した作品をご覧になった感想を聞かせてください。
原作は文字しかないので難解に思える部分もあったのですが、映像になったことで、誰もが抱く感情が発端となって起こり得る話だったのだと気づかされました。
でも、執着だとか愛だとか嫉妬だとか、そういう感情の延長線上にある話ではありますが、火喰鳥の登場シーンも印象的で、ミステリーの要素も楽しんでいただけると思います。
─── 役者としてのお仕事を含め、充実した毎日を送るために、体調管理に関して心がけていることを教えてください。
全部をバランスよくやるのが自分には合っています。毎日ウォーキングをして、週に一回はピラティスに通い、睡眠時間はしっかり確保して、食事もおいしくいただいています。
食べることはすごく好きなのですが、“毎日野菜を食べなきゃ”とか、決めすぎることなく、食べたいものを食べつつ、体調がよくないときは身体にやさしいものを食べるなどしています。
一人暮らしなので、毎日何品も作ることは難しいのですが、お米を炊いたりお味噌汁をちゃんと作ったりとか、そういうことは大事にしています。

─── メンタルを健康に保つために心がけていることはありますか?
最近は、SNSを見過ぎないように気を付けています。スマホにアプリが並んでいると、暇なときにすぐ開いてしまうので、強制的に情報を遮断する時間を作るようにしています。
ファンの方々のお声はすごく大事にしているのですが、世間のイメージに自分自身が振り回されるのはよくないと思っているからです。
そう考えるようになってから、SNSのチェックに充てていた時間に、自分が好きなことを勉強したり、身体を動かしたりするようになりました。
日々の生活のなかで、無理をし過ぎない範囲で身体を労わり、毎日を気持ちよく過ごすことを大切にしているからこその透明感に溢れた美月さん。
彼女の魅力もたっぷり詰まった『火喰鳥を、喰う』、ぜひ映画館でご堪能あれ。

『火喰鳥を、喰う』
原作/原浩著『火喰鳥を、喰う』(角川ホラー文庫刊)
監督/本木克英
脚本/林民夫
出演/水上恒司、山下美月、宮舘涼太(Snow Man) 他
公開/10月3日(金)全国ロードショー
©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
山下美月
2016年、「乃木坂46」3期生オーディションに合格。俳優業にも取り組み、2019年、「電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-」で連続ドラマ初主演を果たす。2024年5月、乃木坂46を卒業。2025年10月3日に、映画『火喰鳥を、喰う』、7日にはドラマ「新東京水上警察」(フジテレビ系)、24日には映画『愚か者の身分』と、出演作品の公開・放送が控えている。また、専属モデルを務める「CanCam」をはじめ、ファッション誌でモデルとしても活躍中。

