将来の妊娠のためにカラダを気遣う「プレコンセプションケア」とは

6月9日(金)、東京国際フォーラムにてスタートした「第23回日本抗加齢医学会総会」。

今回のテーマは「老若男女の抗加齢」とあって、男女問わずさまざまな世代の参加者が聴講した3日間となりました。

中間日の10日(土)に、学会と帝人株式会社の共催で開講されたセミナーは、「女性生殖器機能から考えるプレコンセプションケア–腟内細菌叢と女性の健康のかかわりを中心として–」。

この“プレコンセプションケア”の重要性に関する研究を長年続けている、東京大学大学院医学系研究科産婦人科・准教授の原田美由紀先生が講演を担当しました。

東京大学大学院 医学系研究科 産婦人科
准教授 原田美由紀

女性のカラダに着目した「プレコンセプションケア」をライフワークとして研究を行う。

特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病態ならびに抗がん剤による卵巣毒性に焦点を当て、新規治療・予防戦略の開発を目指す。

既存のホルモン療法によらないアプローチのひとつとして腸内細菌叢に着目している。

“コンセプション”とは、英語で“妊娠”を意味します。

つまり、“プレコンセプションケア”とは、女性やカップルが将来の妊娠のためのケアをすること。

“女性”ではなく“女性やカップル”なのはなぜかというと、赤ちゃんをお腹に宿すのは女性だとしても、妊娠は女性ひとりでできることではありませんし、たとえば不妊の原因にしても、女性ではなく男性側にある場合もあるためです。

セミナー冒頭で紹介されたのは、日本における2020年度の体外受精治療のデータ。

女性が30代後半になると妊娠しづらくなる理由として、卵子数の減少や卵子の質の低下などに加え、“男性のみ”または“女性・男性の両方”に原因があって妊娠に至らないケースは、なんと40〜50%にものぼるとして、不妊治療にカップルで取り組むことの重要性も説明されました。

“プレコンセプションケア”として具体的に何ができるかというと、女性が意識すべきは大きく3つ。

1つめは、子宮内膜症をはじめとする、“卵巣機能に影響を及ぼす婦人科系疾患”を早期発見できるよう、違和感を覚えた時点で医療機関を受診すること。

この疾患の特徴的な症状は、月経痛、性交痛、排便痛などの痛みなので、これらの症状がある場合は特に注意が必要です。

また、多嚢胞性卵巣症候群も、不妊症につながる排卵障害の原因のひとつ。こちらは、月経不順や無月経などの症状が特徴的なので、当てはまる場合は早めに受診したいところです。

2つめは、“着床機能に影響を与える婦人科系疾患”の早期発見に努めること。

こちらには、子宮筋腫や子宮内膜ポリープが該当。経血の量が多い、月経期間が長い、不正出血がある、などの症状があるなら、早めに婦人科を受診しましょう。

そして3つめは、“生殖器の細菌叢に着目すること”。

生殖器の細菌叢が妊娠しやすさや周産期に与える影響は研究途上ではありますが、現段階では、腟内・子宮内細菌叢異常が、早産や着床障害に関連するのではと考えられるようになっています。腟内細菌叢(腟内フローラ)が整っている状態とは、善玉菌が優勢で腟内が弱酸性に保たれた状態のこと。

反対に、腟内細菌叢が乱れると、大腸菌・カンジタ菌などの悪玉菌が繁殖して、おりものが変化して臭いやかゆみの発生につながります。

ただ、おりものの色や臭いが変わることから、自覚症状がありそうに思えますが、この、細菌叢が乱れている細菌性腟症を罹患している人の半数以上は無症状という報告もあるのだとか。

また、帝人が日本国内の女性1000名を対象に実施したウェブアンケートによると、かゆみや違和感などのデリケートゾーンに関する悩みを抱えていても、「誰にも相談できない」と回答した人は77・5%にものぼっています。

そうした女性たちの悩みに寄り添ってくれるのが、最近注目されつつある“フェムテック”や“フェムケア”といった商品やサービス。

特に、腟内フローラに寄与する“乳酸菌サプリ”は、手軽に始められる“プレコンセプションケア”としても注目されつつあります。毎日の生活に取り入れたいですね。

本学会にちなんで、“アンチエイジング弁当”とドリンクがついた“ランチョンセミナー”スタイルで開催。

食べ物でカラダを気遣いながら、自分のカラダについて考えられる貴重な機会に。

土曜日の午後イチという時間帯ながら、会場は満席。

原田先生の講演終了後には、腟内細菌叢についてさらに詳しく知りたいと、挙手して質問する参加者の姿も見られました。

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