20代は、演技論を語ってケンカしたことも。毎日がワクワクの連続だから、目一杯楽しみたい【林 遣都】

─── ビートたけしの青春自伝小説『浅草キッド』が、音楽劇『浅草キッド』として舞台化される。主演を務めるのは、林遣都さん。本読み稽古が始まったばかりの林さんに今の気持ちを伺うと「間違いなく楽しい舞台になる」と笑顔で話し始めてくれた。

音楽担当の益田トッシュさんが作られた今作の曲は、いろんなジャンルの音楽が盛り込まれていて、どの世代のお客さんでも楽しんでもらえる作品です。

きっとお芝居だけじゃない楽しみ方ができる舞台になると思います。

─── 脚本と演出を担当するのは福原充則氏。福原さんの舞台に出演することは、林さんの念願だったそう。

数年前、福原さんが手がけた舞台を観劇したことがあったのですが、あまりの面白さに、雷に打たれたような衝撃を受けました。

演劇の楽しさと素晴らしさに感動し、いつかご一緒したいと思っていたので、念願が叶って本当に嬉しいです。

これまで舞台では割と声を張る役が多かったのですが、今回はナイーブで口数が少ない役どころ。

どう言葉を届ければいいのかと悩み、福原さんに相談しました。すると“自分のお芝居だけがすべてじゃない。相手のリアクションで届くこともある”とアドバイスをいただきました。

今までにない新しい感覚、アイディアが次々と自分の中にプラスされていく感覚があり、毎日ワクワクしています。

─── 『浅草キッド』といえば、過去に何度も映像化されてきた名作。その作品の主演、ビートたけし役を演じることにプレッシャーはなかったのだろうか?

これまでも実在する方を演じさせていただいたことはありますが、たけしさんほど多くの人に認知されている方を演じるのは初めてで。

たけしさんとは以前、番組でお会いしたことがあるのですが、知らないことはないというほど博識で、ユーモアに溢れている方。

ちょっとやそっとじゃ近づける方ではないですし、近づこうなんておこがましいです。

表面的なアプローチはなく、たけしさんの本質的な部分を自分の中に落とし込んで演じていけたらと考えています。

─── 人間関係が得意じゃないところは似ているかな」と林さん。

人目が気になったり、ネガティブに捉えていた性格だったり。でもたけしさんはそんなマイナスと思われがちな部分やマイノリティーなところも笑いに変える方。

むしろ、そういう部分がある人間にしかできない表現があることを示してくれた気がして勇気をもらいました。

─── 林さんの下積み時代の思い出は?

下積みと言えるかわかりませんが、20代のころは飲み屋で演技論を語っては熱くなりすぎてケンカになったり…。

元々人と話すのが得意ではないので、お酒の場で自分をさらけ出していたんですよね。でも飲みすぎて言わなくて良いことを言ってしまったり、二日酔いになったり…。

だいたい、お酒がないと話せないなんて自分に甘すぎだったなと。

─── 今も演劇に対する熱い気持ちを変わらずに持ちつつも、お酒の場で語り合うことは少なくなったという林さん。今回、初共演となる深見千三郎役の山本耕史さんをはじめ共演者の方についても聞いてみた。

山本さんが生み出す一瞬を支配する空気感がたまらなくかっこよく、この人についていけば大丈夫という安心感があるので心強いです。

それは福原さんも同じで、全ての演者が福原さんの稽古を楽しんでいるのがわかるので、現場の雰囲気がとっても良い。

僕は座長という立場ですが、あれこれと考える前にこの贅沢すぎる環境を目一杯楽しみながら、作品への最大限の敬意と情熱を持って挑みたいです。

音楽劇『浅草キッド』

原作/ビートたけし
脚本・演出/福原充則
出演/林遣都、松下優也、今野浩喜、稲葉友、森永悠希、
紺野まひる、あめくみちこ/山本耕史 他

東京公演/10月8日(日)~22日(日)明治座


大阪公演/10月30日(月)~11月5日(日)新歌舞伎座

愛知公演/11月25日(土)~26日(日)愛知県芸術劇場 大ホール

林 遣都

1990年生まれ。2007年に映画『バッテリー』の主演に抜擢され俳優デビュー。同作品で、第81回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、ドラマ・映画・舞台とジャンルを問わず活躍中。近年の主な出演作に、舞台「友達」、「セールスマンの死」、ドラマ「おっさんずラブ」、「初恋の悪魔」、「VIVANT」などに出演。映画「アリスとテレスのまぼろし工場」(9月15日公開)、「隣人X -疑惑の彼女-」(12月1日公開)、「身代わり忠臣蔵」(2024年2月9日公開)が控える。

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