どん底の経験で、生まれ変われる。【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】

映画「スペンサー ダイアナの決意」
クリステン・スチュワート

若くして巨万の富を得た、クリステン・スチュワート。

プライベートでは多くの問題を抱え、どん底を経験しながらも、大人の女優として見事に復活を果たした彼女から、自分を客観視することの大切さを学びたい。

イギリスのロイヤルファミリーの人々は、クリスマスになると毎年エリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集い交流するのですが、1991年のクリスマスのサンドリンガムは例年とは異質で不穏な空気が流れていました。

ダイアナ妃とチャールズ皇太子の関係は冷え切っていて、マスコミ報道では2人の離婚も囁かれていたのです。

イギリスだけでなく世界から注目されていたダイアナ妃は、心身共に追い詰められながら、子供たちのことも考えて人生を変える大きな決断を下すのです。

“実際の悲劇に基づく寓話”である本作は、世界で最も愛されたプリンセス・ダイアナが女王になるか、自身のアイデンティティを守るか、究極の選択に悩む1991年のクリスマスイブ、クリスマス、ボクシングデーという3日間の葛藤を描いています。

王室との軋轢やパパラッチからの執拗な撮影に悩むダイアナ妃の決断の物語が心に突き刺さりました。

チャールズから貰った真珠のネックレスを側近にあげようとして断られたダイアナは、「何もかも決まっているのよ、このネックレスに合うドレスも…」と言い悲観に暮れます。

その後、自分の部屋に大量のドレスが運ばれるのですが、全ての服に朝食用や昼食用とタグがつけられています。

ダイアナは自分の好きな服も着られない王室の風習と不自由さなどに息苦しさを感じていたのです。

世界的セレブとなったダイアナ妃を追う当時のパパラッチの行動は常軌を逸していて、ドキュメンタリーなどで確認してもそれは完全なる“悪い祭り”でした。

そして暴露本を発売され、彼女の自殺未遂や盗聴テープの流出、そしてチャールズ皇太子との別居やお互いの不倫相手の存在が報道され、離婚を決意したダイアナ妃はその後パパラッチから車で逃れる最中に不慮の事故死を遂げるのです。

「パパラッチはまるで顕微鏡で、私はプレート上の虫。羽や脚をむしられるの…」極限状態に陥ったダイアナの失意と大いなる決意の物語である本作を、是非劇場で体験してみてください。

そして、ダイアナ妃を演じたクリステン・スチュワートは、FOXのプロデューサーである父親と脚本家の母親の元、アメリカ・ロサンゼルスで生まれました。

子供の頃からテレビドラマや映画の端役として活動していましたが、彼女の人生を大きく変えたのが映画「パニック・ルーム」に出演したこと。

実はこの作品は元々ニコール・キッドマンが主演する予定だったのですが、彼女が怪我をしてしまい撮影が延期された上で降板。

代わりにジョディ・フォスターが主演となり元々の子役が成長してしまったことでクリステン・スチュワートが大抜擢されたのです。

その後「トワイライト」シリーズで大ブレイクを果たし、「アクトレス〜女たちの舞台〜」ではアメリカ出身の俳優として初のセザール賞・助演女優賞を受賞。

そして本作「スペンサー ダイアナの決意」で、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたのです。

順調なキャリアを積んでいたクリステンですが、私生活ではマイケル・アンガラノやロバート・パティンソンなどと恋愛しつつ、同時期に映画監督ルパート・サンダースとの不倫を報道されたことでかなりのバッシングを受け、ハリウッドの表舞台から去っていた時期もありました。

「トワイライト」シリーズ出演で巨万の富を得たクリステンですが、薬物も含めプライベートでは問題を抱え、どん底も経験しました。

しかしそこから自分を見つめ直し、大人の女優として見事に復活したのです。

世の中の成功者に話を聞くと、大概若い頃は勘違いしたり放漫な態度だったと振り返ります。しかし、何かのきっかけで生活と思考を改めてから人生が上向きになったと言います。

クリステンも地位と名声と金銭を得て色々と見失いましたが、自分の愚かさに気づき更生しました。

やはり多かれ少なかれ自分を客観視できるというのはひとつの才能なのです。

スペンサー ダイアナの決意

監督/パブロ・ラライン
脚本/スティーヴン・ナイト
出演/クリステン・スチュワート、ジャック・ファーシング、
ティモシー・スポール、サリー・ホーキンス、ショーン・ハリス 他 
公開/10⽉14⽇(金) TOHOシネマズ 日比谷 他にて

Written by
コトブキツカサ(映画パーソナリティー)
Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。

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