何事もうまくいかない時、環境のせいにしていませんか?【ハリウッド女優に学ぶ“オンナの生き方”】
人は仕事や恋愛においてうまくいかない時、自分のおかれている環境のせいにしてしまうこともしばしば…。
難民キャンプで生まれ、貧しい生活の中でも目標を見つけ、長い下積み時代を経て成功を収めた
ベトナム出身の女優ホン・チャウ。
彼女が成し得た、逆境を跳ね除ける強い気持ちと行動力に学びたい。
映画「ザ・ホエール」ホン・チャウ
ボーイフレンドのアランが亡くなったことなどからストレスで過食症となり、自宅からほとんど外出することなく引きこもり生活を送っているチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、体重272キロとなり重度の肥満症となってしまいます。
自分の死が近いことを感じていた彼は離婚した妻の元で暮らしている娘エリー(セイディー・シンク)との関係を修復したいと願っていましたが、エリーはそんな父親の存在を疎ましく感じていて心を開くことを拒絶します。
アランの妹で看護師でもある唯一の親友リズ(ホン・チャウ)の援助を受けながら、オンライン授業の講師として働いていたチャーリーは次第に心不全の病状が悪化します。
しかし彼は病院へ行くことを頑なに拒否するのです。
「僕はたった一つ正しいことをしたと思いたい…。」劇中でチャーリーがつぶやきます。
妻と娘がいながらアランという男性を愛してしまい、自分にとって大事な家族を崩壊させてしまったという後悔の念に駆られながら、身体が病魔に襲われても決して病院に行かないのはチャーリーの贖罪なのかもしれません。
自分が死ぬ前に娘のエリーと心を通わせ、幾ばくかのお金を彼女に渡すことがチャーリーにできる本当に正しいことなのか? その判断は観客に委ねられるのです。
主役を演じたブレンダン・フレイザーは一時期ハリウッドのトップスターとなりましたが、体調の変化や結婚生活の破綻、そしてゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の元会長からセクシャルハラスメントを受けていたことで鬱状態となり、(本人のインタビュー談)心と身体のバランスを崩して長らく表舞台から遠ざかっていました。
そんなブレンダンの本作での演技は多くの観客や批評家から絶賛され、第95回アカデミー賞の主演男優賞を受賞。
監督のダーレン・アロノフスキーは、「レスラー」でミッキー・ロークを、そして「ザ・ホエール」でブレンダン・フレイザーを俳優として復活させたのです。
劇中で引用されるハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」では、船長のエイハヴがモヴィ・ディックという名の白いマッコウクジラに片足を奪われながら、揺るぎない信念を抱き続けます。
本作のチャーリーは何を失い、何を信じているのか? 是非、劇場で体験してください。
そして、チャーリーの唯一の親友役リズを演じたベトナム出身の女優ホン・チャウですが、実はタイの難民キャンプで生まれました。
その後に家族でアメリカ・ニューオリンズに移住してボストン大学で映画学を学び、ニューヨークに移って演技学校で芝居の勉強をします。
彼女は長い下積み時代を経て27歳で女優デビューを果たしますが、大きな役はもらえずにいました。
しかし32歳の時にテレビドラマでベトナム移民の娘を演じて話題になり、その後に数本のドラマに出演。
そして38歳の時、マット・デイモン主演「ダウンサイズ」での清掃人役が視聴者や批評家から絶賛され、なんと映画出演2作目でゴールデングローブ賞や全米映画俳優組合賞(SAG)などのアワードにノミネートされ、今回「ザ・ホエール」への出演で第95回アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたのです。
ホン・チャウは自分のアイデンティティは“負け犬”であることだと言います。
難民キャンプで生まれた彼女と家族は幼い頃から貧乏で全く英語が喋れないにもかかわらず渡米して、かなり辛い日々を過ごしたそうです。
しかし彼女は目標をみつけて遂に女優として成功しました。
人は仕事や恋愛においてうまくいかない時、自分のおかれている環境のせいにしてしまう時があります。
しかし、ホン・チャウのように逆境を跳ね除ける強い気持ちと行動力があれば、成功を手中に収めることができるはずです。
ザ・ホエール
監督/ダーレン・アロノフスキー 出演/ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、 ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン 他 公開/4月7日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他
Written by コトブキツカサ(映画パーソナリティー) Profile/1973年生まれ。小学生の頃からひとりで映画館に通うほどの映画好き。現在、年間500本の映画を鑑賞し、すでに累計10,000作品を突破。1995年より芸人時代を経て、2010年より「映画パーソナリティー」としての活動を開始。近年は、俳優としての顔ももち、ドラマや映画にも出演。活動の場を広げている。