大きな壁にぶつかって前を向けない経験は誰しもあると思う【堀家一希】

人は誰しも愛されたいと願うもので、愛を感じられないと心が不安定になることもしばしばだ。

映画『世界は僕らに気づかない』の主人公・純悟のイライラの理由もまさしく、母親からの愛を十分に感じられていないこと。

英題の『Angry son』そのままに、不機嫌な純悟の表情が、母の愛、そしてパートナーである優助の愛を受け入れて変化していく姿を見事に演じた堀家一希さんに、撮影当時を振り返ってもらった。

───本作は、「感動シネマアワード」でグランプリを受賞した企画の映像化作品で、監督が堀家さんにお会いしたうえで骨子を固めていったそうですね。

 「そうなんです。僕がどんなことを感じてどんなふうに生きてきたのかを監督にお話して、当て書きしていただきました。たとえば、父親が仕事人間でほとんど家にいなくて、休日に一緒に遊んだ記憶もほとんどないですし、運動会にも来てくれなかったエピソードなどをお話させてもらったことを覚えています」

───本作の主人公が母親に抱いている感情を彷彿とさせるエピソードですね。

 「クランクイン前に監督から、“これは主人公と母親のお話だから”と聞かされていました。LGBTQやフィリピンからの出稼ぎ労働などといった、いろいろな要素が詰まった作品ですけど、その中でベースにあるのは、“愛されたい”という気持ちだということを確認してから撮影に挑みました」

───母親役のガウさんともども、相手に全力でぶつかっていく姿がとても印象的でした。

 「監督も、あのくらいのエネルギーでぶつかり合わないとつまらない映画になるとおっしゃっていましたが、その言葉に納得させられました。監督は、ご自身も演技の勉強をされていたこともあって、役者目線で話をしてくれたのですごくやりやすかったです。

カメラワークありきで芝居をすることになりがちなのですが、今作の撮影では、スタッフさんがカメラごと動いてくれるので、余計なことを考えずに芝居に集中することができてありがたかったです」

───特にお気に入りのシーンや、印象に残っている現場でのエピソードは?

 「お気に入りのシーンは全部です(笑)。本当に全てが思い入れのあるシーンですが、今ふっと思い出したのは、母親が日本国籍を取得するために偽装結婚していた男性と会話をするシーンの撮影は印象に残っています。

相手役の岩谷さんに心ほぐされたというか、一緒にいて気持ちが軽くなる気がして、素で笑ったところがカメラに収められていると思います」

───登場人物それぞれが問題を抱えていますが、壁にぶつかったときの行動も一人ひとり違っていますね。

 「この作品の登場人物たち同様、生きていたら誰もが壁にぶつかることがあると思いますし、“どうせ僕なんて”と、ネガティブに考えてしまうこともあると思うんです。だからこそ、この映画のなかに必ず“共感ポイント”を見つけられると思うので、ぜひ映画館に足を運んでいただきたいです」

───最後に、本誌1月号ということで、2023年の抱負を聞かせてください。

 「プライベートを楽しむことが役者の仕事にも活かされると思うので、大好きな飲みの席でも深い話ができるよう、新聞を読んで知識を磨いていきたいです!」

『世界は僕らに気づかない』

監督・脚本/飯塚花笑
出演/堀家一希、ガウ、篠原雅史、村山朋果、岩谷健司 他
公開/2023年1月13日(金)

堀家一希

1997年生まれ。岡山県出身。2016年にドラマ『貴族探偵』(フジテレビ)でドラマデビュー。2017年には、ドラマ『明日の約束』(フジテレビ系)で、初の連続ドラマレギュラー出演を果たす。以降、ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS)『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ)、映画『泣くな赤鬼』『東京リベンジャーズ』などに出演。12/9より浅草九劇にて公演の舞台『すべての人類が家にいる』(古川貴義作・演出)に出演するほか、2023年公開予定の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』に出演。

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