最先端のフェムテックで女性の悩みに寄り添う。女性の健康のためのプロバイオティクス

女性の悩みや健康面の不安を和らげるフェムテック分野に積極的な、総合化学メーカーの「帝人株式会社」。

2024年3月には腟内フローラケアのマーケット拡大に向けて、新たにプロバイオティクス素材の販売をスタート。

今回は、第76回日本産科婦人科学会学術講演会と帝人が共催したランチョンセミナーの模様をリポート。女性特有の不安や悩みの解消につながるヒントがみつかるかもしれません。

セミナー登壇者

東京大学医学部 産婦人科学教室 准教授
原田美由紀

女性のカラダに着目した「プレコンセプションケア」をライフワークとして研究を行う。

特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病態ならびに抗がん剤による卵巣毒性に焦点を当て、新規治療・予防戦略の開発を目指す。

既存のホルモン療法によらないアプローチのひとつとして腸内細菌叢に着目している。

Distinguished Professor Emeritus at Western University
Dr. Gregor Reid

女性の健康における有益なプロバイオティクスの役割を 1980年代から今日に至るまで研究を継続。これまでに特許32件取得。6万回以上引用された査読済み出版物606件。

2001年に「プロバイオティクス」用語を定義する国連/世界保健機関専門家委員会の議長を務める。

主な受賞歴に、「Complementary and Alternative Medicine in 2021.ロジャース博士賞」、「Orebro University in Sweden 名誉博士号」、「The Canadian Society for Microbiologists 最優秀キャリア賞」 ほか、60 以上のアワードを受賞。

フェムテックが一般消費者にも浸透し、期待が高まっている

近年、さまざまなメディアで“フェムテック”や“フェムケア”という言葉を目にする機会が増え、自分自身の体調や健康課題について、もっと知りたいと感じている方も多いのではないでしょうか。

“フェムテック”はFemale(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、生理・月経、妊活・妊よう性、妊娠期・産後、プレ更年期・更年期など女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する商品やサービスを指します。

一方、“フェムケア”は特定のテクノロジーに依存せず、さまざまな方法で女性特有の健康課題をケアする製品やサービスのことです。

海外はもとより、日本でも多くの企業がフェムテックに取り組んでおり、「帝人」も同分野に本格参入する企業の一つです。

フェムテックという言葉が使われ始めたのは2020年頃と言われていますが、最近は専門家だけでなく一般消費者にも浸透しつつあり、女性特有の悩みを解決する商品やサービスへの興味と期待が高まっています。

4月20日(土)に開催されたセミナーでは、座長として東京大学医学部産婦人科学教室准教授の原田美由紀先生と、ウェスタン大学特別栄誉教授のグレゴー・リード先生が登壇しました。

リード先生は近年流行の兆しを見せているマイクロバイオーム、腟内細菌叢(腟内フローラ)の研究における草分け的存在で、プロバイオティクスという用語を定義したWHOの専門家パネルで議長を務めた高名な先生です。

女性の健康において非常に有益な細菌とその役割に焦点を当てた研究を行い、32の特許と606の査読付きの出版物があり、それらが6万回以上引用されている世界有数のスペシャリストであることが原田先生より紹介されました。

リード先生は、セミナー冒頭で“マイクロバイオームとは何か、プロバイオティクスとは何かを知っていますか?”と、問いかけます。

マイクロバイオームとは、遺伝子、ゲノム、すべての微生物、プラスミド、代謝副産物のこと。

一方プロバイオティクスは、生きた微生物でなければならず、適切な量を投与すると宿主に健康上の利益をもたらすことができる。

利益をもたらしたかどうかを知るには動物でテストされた菌株を人間に使うのではなく、人間による研究、つまり臨床試験が必要であると述べました。

日本人女性の多くが、腟のかゆみやにおいに悩まされている

日本では毎年260万人から390万人もの女性が尿路感染症に罹患しているそうです。

また、1996年のデータになりますが日本人女性の13・6%、約900万人が細菌性腟症に罹っており、最新の研究では、ほとんどの女性が1週間以上も体調不良が続いてしまったり、感染症を繰り返しても、それほど気にかけていないのが現状です。

2023年に報告された研究で、日本の20代から50代の女性のうち、80%が腟または外陰部の健康問題を経験したことがあると報告されています。

そのうち、、70%が“かゆみ”と答え、次に多かった回答が“におい”でした。

しかしながら、この調査に参加した女性の77%が自分の症状を誰にも相談しておらず、46%もの女性がどのようにケアをしてよいか分からないということが分かりました。

かゆみやにおいを主訴に病院を受診する女性はごく少数です。

日本の女性が自身の腟の健康やおりものについて十分な知識がないことは、大きな課題だとリード先生は訴えます。

“におい”は、女性の自尊心や生活の質にも悪影響を及ぼす、とてもデリケートな問題です。気軽に相談できることではなく、受診をためらってしまう精神的なハードルがあるのかもしれませんが、自分のためにも、今こそケアを始める必要があるのです。

続いて、リード先生はセミナーを聞いている医師らに向けて“私たちは微生物に注意を払わなければならない”と語りかけます。

腟内も、腸内フローラと同様に、多様な細菌が存在しフローラを形成していることが分かってきています。

腟内で最も一般的な微生物は、ラクトバチルス・ジェンセニー、クリスパタス、イナーズで、ほとんどの健康な女性はこれらの菌が定着し、健康な腟内フローラを形成しています。

一方、“クリスパタス”の菌株の中には、悪臭を放つ“アミン”を生成するものがあることがわかっています。

悪臭というと細菌性腟症を思い浮かべると思いますが、腟内の善玉菌である乳酸菌が減少し、これに代わってガルドネラ菌などの細菌が増殖すると、魚の腐ったようなと表現される悪臭を放つようになります。

細菌性腟症に罹患すると腟内を占有しているクリスパタス菌が減少していたという研究報告もあります。

女性の健康に関して最も多く臨床報告のある乳酸菌GR-1と乳酸菌RC-14の研究を長年にわたって行ってきたリード先生は、多くの女性が悩んでいる腟の課題を解決に導くには、プロバイオティクスが不可欠だと語りました。

抗菌薬だけでは腟のにおいは解決できない。必要なのは乳酸菌

例えば、カンジダ性腟炎の患者の場合は、抗生物質を投与し治療します。

抗生物質で感染症の原因である細菌を排除するのですが、一方腟内に定着している正常な乳酸菌も排除してしまうという欠点もあります。

リード先生の研究から、乳酸菌GR-1と乳酸菌RC-14は増殖した細菌のバイオフィルムを分解し、自身の免疫機能を高めることでクリスパタス菌などの正常な乳酸菌が腟内に戻る手助けをしていることが分かりました。

「抗生物質と乳酸菌GR-1、乳酸菌RC-14を併用することで、腟内フローラを整え腟の健康を取り戻すことができる」とリード先生は語りかけました。

また、プロバイオティクスは他の製品よりも多く菌数を含有していたり、多くの菌株数が含まれていればよいわけではないと、リード先生は続ける。

ヒトでの臨床試験が実施され、健康上の利益をもたらすのに必要な菌数が示されていることが重要なのです。

また、各菌株がヒトの体内で何をしてどのように働くのか、なぜ必要なのかヒト臨床試験で試され、エビデンスがあるプロバイオティクスをぜひ選択してほしい、というメッセージを送られていました。

女性の健康が守られ安心できる、より良い世界を目指して

最後に、“私たちのモットーは女性の健康維持に貢献し、世界をより良い場所にすることです”と締めくくりました。

医学会でも、薬剤のみならず乳酸菌などのサプリメントの活用が注目されつつあります。

私たち女性の健康維持のため、サプリメントを普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょう?

第76回日本産婦人科学会学術講演会

帝人共催セミナー:The microbiome
and probiotics for women’s health

2024.04.20 パシフィコ横浜ノース

座長/東京大学医学部 産婦人科学教室 准教授 原田美由紀

演者/Distinguished Professor Emeritus at Western University Dr. Gregor Reid

※文中の「乳酸菌GR-1(Lactobacillusrhamnosus)」および、「乳酸菌RC-14(Lactobacillus reuteri)」は、クリスチャンハンセン社の商標です。

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