焦らずに、自分に合った場所を見つけよう。大田紳一郎×藤田英直

“久しぶり! いつぶりだ? 元気だった?”

7月12日、大阪のライブハウスで再会を喜びあうのは、「doa」の大田紳一郎さんと「なおけんバンド」の藤田英直さん。この日、3年ぶりとなるdoaのアコースティックライブ“3WAY STREET”を観るために藤田さんが大田さんの元へ駆けつけたのだ。

新型コロナウイルスが「パンデミック」と掲揚されてから早2年ちょっと。私たちの日常は大きく変化し、“このままでいいのだろうか?”と漠然とした不安を抱えている人も多いはず。

少しずつ元に戻りつつあるとはいえ、まだまだ出口が見えない今、自分が自分らしくあるためにはどうすればいいのだろう?

音楽一筋でここまでやってきた大田さんと、会社役員としての仕事をしながら音楽を続けてきた藤田さんにお話を伺った。

藤田英直 Hidenao Fujita / なおけんバンド《Vo&Gt》

バンド活動中にFMラジオのパーソナリティーをつとめた番組をきっかけに岩水研次と出会い”なおけんバンド”を結成。自身は企業役員とミュージシャンの2つの顔をもち、夢を忘れつつある同世代へ、あの頃の気持ちをロックンロールに込めて発信し続けている。

興味をそそるものに出会えたら、選んでみるのもあり

藤田:一時期、ギターを弾くのも歌うのもいやになってしまったこともありました。ライブは全部中止で、配信ライブをしてみるも、僕たちなおけんバンドのファンの人って、ライブハウスで飲んだり食べたりしながら音楽を聴くというスタイルが好きな人ばかりなので、いまいち反応が薄くて…。

でも、ライブはできないし…。と、そんな日々の繰り返しで、目標がなくなってしまった。アルバムを出す予定もなくて、音楽へのモチベーションをどう保っていいのかわからなかった。

大田:わかる。僕もライブが全公演中止になって最初の1年は沈みまくっていました。配信ライブは全世界の人に聴いてもらえるチャンスでもあったけど、やっぱり生でお客さんの反応が見られないって寂しいんですよね。

藤田:最近やっと有観客ライブができるようになったけど、コールアンドレスポンスはまだできないしね。うちは相方が面白おかしくするのがウリなのに(笑)。おかげで魅力も半減です。大田も音楽活動について考えなかった?

大田:考えさせられる時期ではありましたけど、僕は単純バカというか、藤田と初めて会った頃から音楽に対する思いは何も変わってない。当時は、バンドを組んで、練習して、ライブを積み重ねていけばプロになれると疑わなかった。ほんと、素直すぎるというか世間知らずというか(笑)。

だから別の仕事で地盤を築きながらやりたいことも続けている藤田の姿を見るとすごく尊敬する。そんな道もあったのかって。

コロナが、やりたいことを見つめるきっかけに

藤田:でも、大田は実際にメジャーデビューしてプロになったんだからすごいよ。

大田:なかなか思いどおりにはいかなかったけどね(笑)。でも、自分のやりたいことを改めて見つめるきっかけにはなったかな。

最初はギタリストとしてコーラスをしてたけど、やっぱり自分で歌いたくなってアマチュアに戻って。そのとき藤田も自分のバンドをやってて一緒にやろうって誘ってくれたんだよね。

藤田:でも僕のバンドで歌って欲しいってお願いしたら“自分で歌え”って。歌い方も教えるし手伝うからって言われたんだよ。覚えてる?

大田:そうだったっけ? 結果、コーラスとして入ったけど、思えばその時から今のスタイルと変わってないね。アコギを弾きながら歌ってコーラスしてって。藤田のバンドを手伝ったときからこのスタイルができあがったのかもね。

それから「doa」として再出発した大田さん。doaは、今年の7月でデビュー18年目を迎えた。

藤田:バンドって5年続けるのも難しいって言われてる中、18年は本当にすごい。

大田:「なおけんバンド」だってもう7年でしょ? それに藤田は別の仕事をしながらだからね、ほんとにすごいよ。

藤田:僕が役員をしているシリコンテクノロジー株式会社は、半導体電子部品を扱っていて、設計開発から製造も請け負う商社で、楽器メーカーさんとのお取引も多いんだよ。

大田:藤田のところで作ってる除菌デバイスは、ライブハウスとかにも設置してあるよね?

藤田:そう。元々は、2020東京オリンピックのときに依頼された商品だったの。オリンピックでいろんな国の方がいらっしゃるでしょ? そうすると、今まで日本にはなかった菌が入ってくるかもしれない。それを防ぐために亜塩素酸水を噴霧する機械が欲しいと。

大田:なるほど。

藤田:ちょっと難しい話をすると、ウイルスには「エンベロープウイルス」と「ノンエンベロープウイルス」の2種類があるんだけど、アルコール系など、大抵の除菌剤は片方にしか効果がない。

だから、その両方に効果的な空間除菌システムをオリンピック開催までに作ると言う話だった。けど、オリンピックは延期になってしまって…。

でも待てよ、と。これコロナウイルスにも効果的なんじゃないのって。それで実際にライブハウスでの実証実験をしたらエビデンスが取れて。今、色んなライブハウスや商業施設などに置いてもらってます。

自分のことで悩んだら、周囲の人の幸せを考えてみる

大田紳一郎 Shinichiro Ohta / doa《Vo&Gt》

1993年に「BAAD」としてデビュー。翌年には『君が好きだと叫びたい』がヒット。以来、B’z、ZARD等、数多くのライブサポートの経験を持つ。2004年より、徳永暁人(Vo&Ba)・吉本大樹(Vo)と共に「doa」として精力的に制作活動とライブ活動を行っている。

大田:最近やっと観客を入れてライブができるようになったけど、まだ不安な人もいると思うからね。あると安心感が違うよね。

藤田:観る側も自分たちで対策をしてくれているけど、+αでライブハウスがこういう対策をすることも大事だと思う。僕の会社員としての仕事でアーティストも観客も安心できる環境を作るというのは、これ以上嬉しいことはない。

そう笑う藤田さん。一度音楽から離れようとも考えたのに、どうやってモチベーションを立て直したのだろう? “今のままでいいのかな”と悩む女性たちへのヒントになるのではないだろうか。

藤田:やっぱり音楽が好きなんでしょうね。気付いたらスイッチが入って曲作りを始めていました。そうしたら相方の声が欲しくなって、CDにして郵送したのよ。“歌詞書いて”って(笑)。

大田:仲間の声が欲しくなるってすごくわかるな。コロナ禍でさ、一番感じたのが周囲の人のありがたみとか大切さで。自分の幸せは周りの人が作ってくれてるんだってしみじみ実感した。だから自分のことで悩んでいる方も、まず周囲の人の幸せを考えてみて欲しい。

藤田:いいこと言うね。今の時代、女性に対して求められるハードルが上がってるというか、役割がどんどん増えている気がするし、実際に僕の会社でも役員に女性が増えている。でも、可能性が広がっているのだと思うから、自分に合った場所で活躍してほしいですね。

大田:僕は“継続は力なり”という言葉が好きで、続けることがよしと思ってるところがあるけど、続けてなかったらどんな世界だったんだろうと考えるときもある。だからもし今やってること以上に興味が持てるものに出会えたらそっちの道に行くのもいいと思うよね。

この数時間後、ライブハウスは満席。感染対策で声援が禁止されているものの、会場からは大きな拍手の熱気で包まれていた。平穏な生活を一変させたコロナウイルスだが、唯一恩恵をあげるとすれば、周囲への感謝や本当に自分のやりたいことを見つめ直すきっかけになったことかもしれない。

INFORMATION

NEW ALBUM「CHEERS」
2022年9月7日(水)にdoaとして13枚目のオリジナルアルバム「CHEERS」をリリース。また、9月23日福岡公演を皮切りに、全国ライブツアーを開催。詳細はdoaオフィシャルサイトまで。
【doa official website】https://d-o-a.jp

INFORMATION

「藤田英直Soloライブ」
9月10日(土)19:00〜21:00 赤坂カンティーナ(港区赤坂2-13-17) 11月26日(土)18:00〜20:00 なおけんバンドLive!ライブミュージックマクサ(三重県松阪市市場庄町1148−2)
11/26は大田紳一郎ゲスト出演決定!

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